悲しみはない ページ6
はく、と薬研の口から音にならない空気が漏れた。
濁った瞳が一度輝いて、元の光を宿す。
「ぁ、…ぁ、あぁ、あ」
放心状態で涙を流している薬研の上から体をどかす。やっべー腕いてー。
シャツを破って腕に巻き付ける。くっそ新しいシャツだったのに。どこのどいつだよ薬研の目ん玉くり抜いたの。出てこい殺す。
「たぃ、しょ…」
「やっほー薬研。帰ってきたよー」
上体を起こして手前を呆然と見上げる薬研の涙を拭ってやると、震える手で腕を掴まれた。薬研サン、そこ斬ったとこッス。痛いッス。
「たいしょう、…大将っ…！」
「ぅわお」
がば、と手前に抱きついて肩に顔を埋めてきた。じんわり感じる涙が温かい。
「俺っち…ぅう、たいしょぉ…」
宙に彷徨わせた手をどうしたら良いか分からず、とりあえず片手で頭を撫でてやった。あ、ツヤサラキューティクル。手入れってすげー髪質まできれいに出来んのか。
「ごめんなごめんな、怖かったよねー」
子供をあやしたことなんかないし、泣き止ませ方なんて知らない。まあ手前も十分子供だけどさ。十五だけどさ。でも今は薬研のほうが子供じゃん？泣いてるし。手前は泣いてない。
「ふ、ひぐっ…ぅあ、ぐす」
背中に腕を回して縋る薬研の頭をそっと抱きしめた。
驚いたのか泣き声が止まる。
「…なんか、ごめんな？」
「ちがっ…！大将が謝ることは何もないんだ」
肩から顔をあげ、薬研は手前の両頬を包み込んだ。
「ごめんな、ごめんな大将…」
斬られた肩が今になって痛みを増してきた。腕も痛いし肩も痛い。なんで一日目なのにあちこち痛いんだよまだ薬研にしか会ってないぞ。ここでへばってちゃ本気で他の刀たちに殺される。
「また怪我、させちまった…」
「良いよ、別に。肩は手前が避けると思っての攻撃でしょ？それに、自分でつけた傷の血じゃないと手入れって出来ないし」
それに加えて霊力ごっそり無くなるけど言わないでおこう。余計な心配かけさせたくない。今頭が真面目に痛いけど。
「大将…ぅう、会いたかった…！」
額をこつりと合わせて涙を流す薬研の瞳には間違いなく手前が映っている。手前が見えている。
地面に放っといたこんのすけがぴく、と尾を揺らした。
「…はっ！A様ぁあ！」
「…A…？」
薬研が少し怪訝そうに眉をひそめた。
「んー？手前の真名」
「まっ…！？」
両目をこぼれるんじゃないかってくらい見開いて、薬研は手前を凝視した。
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碧 - 面白かったです！御体に無理がないように頑張ってください！ (4月13日 11時) (
レス) id: 75384074dc (このIDを非表示/違反報告)
？？？ - 更新楽しみにまってます。 (3月28日 18時) (レス) @page17 id: 66c9a050dc (このIDを非表示/違反報告)
天照(プロフ) - 面白かったです❗️更新楽しみに待ってます！ (1月4日 23時) (レス) @page7 id: aa210f3daf (このIDを非表示/違反報告)
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