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思わず、は?と短い言葉を漏らしてしまう大寿に、二人は彼女を引き取るまでの経緯を語り始めた。
父親が正和の死の原因だと言うことに腹はたったが、Aのことにはさほど驚かなかった。もちろん、殺す気で刺したことには驚いたし、まさか彼女が事の発端だとは思わなかった。昔から温厚な性格だった。あまり怒ることは無かった。しかし、身内のことになると話は別だった。
武道家の娘であるのだからやはりそれなりに強い。彼女の母親はそちらの方の界隈では有名で、有名な武道家の家に生まれた彼女の母親はまさに才能の塊だった。そんな彼女が父親に反抗しなかったのはもちろん我が子のためであるが、本気を出せばあんな父親一人なんて簡単に伸すことが出来ていたであろう。そして、そんな彼女のDNAと柴家のDNAを持ち合わせた彼女はまさに異彩である。母に似たのか、小柄なせいで力はさほど無いものの、遠心力と重力を味方につけて幼い頃から嗜んでいた柔道だって難なくこなせる。それに加えて、彼女の周りには天才が多かった。
佐野万次郎、今牛若狭、荒師慶三、瓦木千咒を筆頭に、喧嘩の強い不良たちが彼女の周りを囲んでいた。喧嘩に興味を持たせたかったわけでも、喧嘩をさせたかったわけでもなく、一つの身を守るものとして、蹴りの仕方や交わし方を軽く教えられた程度だった。しかし、彼女の身体はそれを素直に受け入れ自分の
身内、それこそ本庄がいい例だ。どこぞのナンパ男に連れていかれそうになった彼女を助けるべく、男の顔面に飛び蹴りをくらわせて気絶させた話が一番新しいだろうか。だからこそ彼女が自分の愛する兄を殺した仇を前に殺意を芽生えさせ、日本刀で突き刺したことにも驚きは無かった。いや、彼女でなくても同じことをしていたのかもしれないが。しかし、殺さなかったのは、彼女の気の迷い。腐っても父親なのだからという戸惑いからだろうか。やはり彼女は優しすぎる。
このことを、彼らは知っているのだろうか。灰谷兄弟はもちろんだが、長らく会っていない明司や三途だって、詳しくは知らないかもしれない。あえて言う必要も無さそうなのでわざわざ言いはしないが。
「俺は別に警察の情報が欲しいわけじゃねぇの。愛してるから傍にいるだけ。」
恥ずかしげもなくそう言ってのけた彼に、大寿は複雑そうな表情を浮かべたあと、短くため息をもらした。昔からのことではあるが、妹は厄介なやつを惹き付ける天才だと思う。
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Liezabeth Gillies(プロフ) - 中高生が書くような文章ではなくしっかりとした文才があり安心して作品を楽しめます。ところで、どのような結末になるのでしょうか。着地点はどこに、、? (2021年12月1日 1時) (レス) @page43 id: f20a915395 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 面白くて一気読みしました!好き!応援してます! (2021年11月10日 19時) (レス) @page22 id: 1f03340a86 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - すみません、20話の『頭のおかしい練習に囲まれて』は『頭のおかしい連中に囲まれて』の間違いではないですか? (2021年11月8日 3時) (レス) @page20 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
まるきち(プロフ) - 文章力ものすごいのに、ギャグ線強くて好きです♡前編からずっと読んでます!花蛸花さんのペースで頑張ってください💪 (2021年11月7日 12時) (レス) @page21 id: 4a45715550 (このIDを非表示/違反報告)
結菜 - 好き、、なんで、こんな、作品作れるの??え?なんでこんなに、文才あるの?え?神様って不公平だね。てか、神様っているのかな?、、、あ、挨拶が遅れてすみません!結菜です!花蛸花さんの作品好きです!面白すぎて一気見しました!!! (2021年11月4日 18時) (レス) @page18 id: 05b53aed2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年10月30日 2時