検索窓
今日:29 hit、昨日:34 hit、合計:214,680 hit

36話 ページ36

「落ち着き、ましたか…?」


「びっくりしたな。目抉っちゃうのかと思った」



ベッドで俯いて床を見つめるイライを挟むように、自分ナワーブと、少し離れたところにイソップが座っている。


抉るつもりだったよ。と返され、鳥肌が立つからやめろと言った。
あの時押さえつけておいて良かった。


「……分かるかい。自分一人だけ、この後に起きる絶望を知ってしまう恐怖を。未来を変える力があるほど、僕は……私は強い人間じゃない」


歳は自分とさほど変わらないはずなのに、いつも落ち着いていて大人びていたイライ。……自分もれっきとした大人だが。
今はまるで、オバケか、はたまた雷なんかに怯える子どものように見えた。


「……イライさんは、僕なんかよりよっぽど強い」


「いいや……私は、臆病で弱虫だ。
Aがここに来てから、一度も布を外して顔を見せていないんだ。最低だと思わないかい?彼女の未来を見るのが怖いって理由でさ。
本来、この力を使って守ってやらなきゃいけなかったのに。それをしなかったから、こんなことになった」



口下手な俺が上手く慰めることも出来ずにいた時、ノックの音の後にAの治療をしていたエミリーが部屋を訪ねてきた。


「クラークさん、あら二人もまだ付き添ってたのね。
Aの治療が終わったわ。もう大丈夫よ」


「あぁ、良かった……ありがとう、ございます」


安心した様な様子は見せるも、どこか抜けきれない表情だ。
そんなイライを見たエミリーは真剣な顔になり


「サベダー君、カール君、少し席を外してもらえないかしら?」


そう言って、俺達は追い出されてしまった。

少し気になったが、俺はもう大人だから素直に出たさ。



「Aのこと、話しておこうと思って」



扉の向こうからそれだけ聞こえた。

37話→←35話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (317 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
431人がお気に入り
設定タグ:第五人格 , IdentityV , 占い師
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

えるみ(プロフ) - あねもさん» 閲覧ありがとうございます!花言葉についてはあえて触れなかったのですが、分かってくれる方がいて嬉しいです……! (2019年9月22日 16時) (レス) id: 58f336f1ac (このIDを非表示/違反報告)
あねも(プロフ) - とてもおもしろかったです!最後に出てきた紫色のアネモネは、あなたを信じて待つという意味ですか?私自身、紫色のアネモネがとても好きなので嬉しくて思わずコメントしてしまいました!完結、お疲れ様でした! (2019年9月22日 4時) (レス) id: 8c1c97f69f (このIDを非表示/違反報告)
えるみ(プロフ) - *まめ丸*さん» 感動してもらえたなんて嬉しいです.......!またいつか新作作った時はよろしくお願いしますね!ありがとうございました! (2019年8月15日 11時) (レス) id: 24de3ea6a1 (このIDを非表示/違反報告)
えるみ(プロフ) - カゲロウ(白ヰ迷ヰ戌)さん» 完結させられて良かったです!閲覧ありがとうございました! (2019年8月15日 11時) (レス) id: 24de3ea6a1 (このIDを非表示/違反報告)
*まめ丸*(プロフ) - 完結おめでとうございます!!すごくよかったです!感動しました!!えるみさんと出会えてとても幸せでした!!そしてお疲れ様でした!!えるみさんの素敵な作品いつまでも待っています!!えるみさんや作品大好きです!!えるみさんの幸せを願って。また会える日まで!! (2019年8月14日 21時) (レス) id: 7b0adad536 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:えるみ | 作成日時:2019年7月13日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。