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大事なもの ページ49

「私の名

  夢

 異能力、

その凡てを忘れて


──キミは何ト云ウ?」


彼女の口から零れ落ちたその言葉は、わたしの足を止め、戦意を喪失させるのに、充分な効果があった

カランとナイフが落ちる音がした


「わたしは──」

わたしは、何も、云え無い

凡てを忘れたわたしに云える言葉は、何も無い


お姉ちゃんとの想い出は憶えているのに

大事な事だけがするすると抜け落ちていく感覚


ボゴンッ

鈍い様な大きな音が後ろで鳴った

中也がパンダを倒したのだろう

頭は働くのに身体が動かない

わたしは後ろを振り返る事もせず、ただ立っていた


その時、優しく肩に手が添えられた

嗚呼、中也の手だ


その温もりを感じて、泣きそうになる

もう、ひとりじゃないんだ、と

あの時中也に感じた温もりにも似ている
いじめから救ってくれた時の

そして中也は云った

「大事な事は、忘れて無ェんだろ?」

わたしに気付かせる様に諭す様に、


「本当だ」

ポツリと呟いた

忘れてなんか、無いじゃないか


名前、夢、異能力、確かに多くの事を忘れた

でも、違う

大事なのは、もっと別の……そう、想い出

二人で過ごした年月が積み重ねてきた、信頼

花を、空を、自然を見て育んだ愛情


そっちの方が、わたしにとって、大事なモノ

お互いに与えあえた特別なモノの筈だから


虐められた事だけが人生じゃない


「お姉ちゃん」

それに、気付かせてくれて

「ありがとう」

お姉ちゃんのお陰で、今、こんなにも大切な人が居ます

だからどうか



──安らかに眠って



異能と云う、寿命の源を失って倒れるお姉ちゃんを見て、わたしは想う






◆シャンside◆

水の中に私は居た

ゆっくりと沈んで行く

上に見える光は私には眩しすぎた

──死、か

胸の中で呟いた

死因は多分異能力が倒されたせい

妹の前で文字通り親の【形見】を使った

私は元々運命が弱く、産まれた直後に死ぬ所だったらしい

それを、親は自分達の寿命と引き換えに私に【形見】を授けた

寿命を与える異能力だ

それも何かと寿命と引き換えに

条件は、触れる事

だから私の夢、獣医になる事は無理だった

助けてようと触れれば、逆に寿命を奪う



──返還



その言葉がきっと似合う


親から貰った愛情を妹に注ぐ

紛い物の家族ごっこだったけど

「楽しかったなぁ…」


ただ、私は願う

Aちゃん、


生きて、、、、、

――――――――
――

名前忘れられるのはいやだよね
シャン優しい((

作者より→←その名を



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設定タグ:文スト , 中原中也 , 文豪ストレイドッグス   
作品ジャンル:恋愛
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爽斗 - せれな さん» 本当ですか!!ありがとうございます!!頑張ります!! (2021年8月27日 22時) (レス) id: 5b5562e114 (このIDを非表示/違反報告)
せれな - 本当に面白いです これからも応援しています! (2021年8月25日 20時) (レス) id: 6fed7b85b5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:爽斗 | 作成日時:2021年7月15日 2時

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