第8話 並べて置いてある ページ10
「柳生、何処行くんじゃ?」
「図書室ですよ、少々用がありますので……」
放課後、
なるべくテニス部に見つからない様に
図書室へ行きたかったのだが、仁王と会ってしまった。
「図書室に?」
「ええ、そうですよ。
何か悪いですか?」
早く行きたいのに、と心の中で思っていると
仁王は、そうあ。と一言だけ言って
すれ違い、反対方向に歩き始めた。
「まさか仁王くん……いや、
流石に彼ではないですよね。」
肩の荷物を掛け直し、
図書室へと足を速めた。
特別塔の廊下には
オレンジ色の夕日が綺麗に見える。
いつもは薄暗い特別塔も
今だけは明るく照らし出されていた。
「あ、柳生くん。」
扉を開けると司書の先生がいた
「こんにちわ先生。」
「柳生くんと合うのは久しぶり。
先生最近忙しくて、ここに来れてないからね。
司書の先生なのに、ダメね〜」
明るく笑う先生は、忙しいなどと言いながら
司書室へと入っていった。
「しかし、これからどうしましょうか…」
日記の持ち主に、つい“話したい”と書いてしまったが
相手の確認をどうやって取るか考えていなかった。
OKという返事以前に、拒否すらもしれない。
もしも、相手が拒否した場合は
この先一生関わることなどないのだからまだ良しとしよう。
だが、OKだったら、相手も困っただろう。
“どこに置いておくか”これが一番の問題点
「う〜ん…流石に直接お話したこともありませんし、
字だけ見て、この人がどういう性格など、
私にはわかりませんし…」
柳生は頭を抱えた。
「うーん、逆の立場で考えたとして…」
私ならどこに隠しますかね?
流石にカウンターは無理として、自分で持ち歩く?
いや、でもそれは…
「____あ。」
柳生は、もしや。と思い、
本棚へと向かった。
「ああ、ありました。」
そこには、
柳生の予想通りに、日記が置いてあった。
「確かにここなら、
じっくり見ないと見つかりませんしね。」
柳生は椅子に座り、
ノートをパラパラと捲った。
そこには、丁寧な字で
“良いですよ、このノートで、お話しましょう”
と、書かれていた。
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作者ホームページ:なし 作成日時:2015年10月25日 21時