第6話 目印の本 ページ8
「………」
「小野寺さん?」
「はあ…」
「小野寺さん!」
隣から大きな声が聞こえて
驚いて振り返る。
「ああ、聞こえてなかったんだ。
てっきり俺、無視されたのかと思ったよ。」
ニコニコと朗らかな笑みを浮かべる彼は、
笑っているはずなのに、少し怒っている様に見える。
私は黙って彼を見ていたが、
なかなか話しだしそうにないため、視線を黒板へと戻した。
「ねえ、小野寺さ」
「っ!!」
急に手が伸びてきたので振り払った。
私は、人には触れられたくないからだ。
「あ、ごめんね。」
彼は申し訳なさそうに謝ってきた。
私は黙って俯いた。
こうして私は、
1日中誰とも視線を合わる事はなかった。
放課後、
私はいつもよりも早足で図書室へ向かった。
中に入り、一番奥の机に座って
新しいノートを1冊出して、書き始めた。
「…何を書こうか。」
付箋の相手は、“お話しませんか?”と言った。
これは、直接か間接かで聞かれると、
直接のほうが正しいと言える。
ただ、私はこの相手とは直接的に話したくはなかった
まだであっていない人と、いきなり会話など、
私にとっては無理難題。
「書くのはやめようと思ったけど、
やっぱり“交換日記”にしよう。」
お互いの情報を、
できるだけ詳しく、具体的に。
これが私にとって、ベストな答え
「名前は………書かなくても良いか。」
でも、お互い呼ぶ時に困る。
「単純に、小野寺のOでいいかな…」
短めの自己紹介を書き、
最後にイニシャルのOを書いた。
「このノート、どうしようか…」
人には見られたくない
だからといって、カウンターに置くわけにも行かない。
何処なら見つからない?
本棚の死角?それとも、ほかの本と一緒に少しだけ出しておく?
いや……
これは可能性にかけてみるしかないけれど、
ここならきっと、この人も気づいてくれるかも知れない。
私はノートを本の棚に入れた。
私と付箋の人しか読んでいない、小説の棚に
私と君が話せるまで、
あと何日_________?
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作者ホームページ:なし 作成日時:2015年10月25日 21時