*Spring* ページ45
『春風』
話題の映画のチケットを手に入れた、
そう私に見せびらかして来た仁王くん。
てっきり丸井くんでも誘うのかと思いきや、
私に押し付けるように渡してきて耳元で囁いた。
『柳生、小野寺と行きんしゃい。』
小首を傾げる柳生に気にもせず、
仁王は悪い顔で自分で立てたプランを柳生に教えた。
待って、と止めに入る柳生に、「暗記すればいい」そうメモ用紙を渡すと、手をひらひら振りながらどこかへ行ってしまった。
やれやれ、とため息一つ。
どれ、と、メモ用紙に目を通す_
「___仁王くん!!!」
怒りの混じった声が、廊下に響き渡った。
仁王が渡したメモ用紙には、
ピンク色の蛍光色でデカデカと
「小野寺と柳生のデート大作戦♡」等と書かれているではないか。
柳生は、小野寺には好意はあるものの、
お互いにそういう関係ではない。
特に小野寺の気持ちなんてよく分かってもいないのに、そんな風に書かれて殺意がわかない訳が無い。
今すぐ仁王を捕まえて吊し上げでやりたい。と、思いつつも、
「小野寺さんと、デートなどという事を、うーん、、
彼女は一体何が好きなんでしょうか。」
割と真剣に悩み出した。
なんだかんだ言って、満更でもない柳生である。
「小野寺さん、あの、突然なのですが…」
「…うん、どうしたの?」
「あの、な、なま、なまえ、よ、あ」
「マヨネーズ…?」
映画館当日。
仁王は物陰から2人をこっそり見に来て居たのだが、
いても立ってもいられず出ていくべきか悩んでいた。
「名前で呼んでもいいか?」それを聞くだけなのに。
かなり親しい間柄だからそれぐらい、と思ってメモに書いたのに、この有様。
「柳生くん、マヨラー?」
「いいえ!あ、その、なま、なま、」
「なまえ!」
「あ!君の名は、ね。凄い人気だったみたいだよね、あの映画。」
「ああ、ち、違います!」
「え?!」
「ち、違いません!」
「何をやっとるんじゃあいつは…」
あまりにうぶすぎて。
思わず目を伏せたくなるような。
2人の休日を丸一日着いて行ったが、
柳生にはまだまだハードルが高そうな様子であった。
(…柳生くん、突然なんだけどさ、名前で、呼んでもいい、かな?)
(…!ええ、構いません。では、私も_)
(実はね…柳生くんの後輩の切原くんに、名前で呼びあわないんですか、て、言われちゃったんだ.。)
(切原くん……あとで説教ですね。)
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作者ホームページ:なし 作成日時:2015年10月25日 21時