Diary【柳生比呂士】 (ページ44)

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＊ページ44

“卒業式”
という日から、

数ヶ月経った、ある日＿＿

「小野寺！
頼みがある！！」

「……えっと、何方でしたっけ？」

「俺だ、俺！テニス部の丸井！
仁王から聞いたんだけどさ、
小野寺って、柳生と仲良かったんだろ？！」

私のクラスの飛び込んできた、
テニス部の丸井くんは、
両手を合わせて、私に必死に頼みごとをしてくる。

「仲が良かったのかは」

「この前部屋の掃除してたらさ、
赤也と無くしたと思ってた柳生の本見つけたさ！
悪いんだけど、返してきてくんね？」

話の内容に、
思わず目が点になってしまった。

悪ふざけて人の本を失くすなんて、
人間としてどうかと思う。

しかもこの様子だと、
柳生くん自身本を失くしたこと、
気づいてないだろう。

「頼む！
これ、渡すだけで良いから！！」

そう言って本を置くと、
ダッシュで教室から出ていってしまった。

「はあ…全く…。」

仕方がないので、
柳生君が通う、学校まで行くことにした。

-

「＿＿なる程、そういうことでしたか。」

事情を話すと、
柳生は呆れた表情で、ため息をこぼした。
それもその筈。

「丸井くんも仁王くんも、
人任せなんだね。」

「あの二人には本当に困ります！
…わざわざ、ありがとうございました、小野寺さん。」

「気にしないで。」

何ヶ月かぶりにあった柳生くんは
ちっとも変わってはいなかった。

ただ、少し身長が伸びていたりするだけで、
丁寧な口調も、紳士な態度も変わらなかった。

「あの、小野寺さん。」

帰ろうとした際に、
掴まれた右手。

「どうかした？」

「あ、いえ、その…」

戸惑う彼の額に、
汗が浮かんでいた。

首を傾げると、
一つ、咳払いをして、メガネを上げる。

「今度、お時間があったら
何処かで話でも、しませんか？」

一瞬、驚いて目を見開くと、
柳生は慌てだした。

「これは、ナンパという、その…
そういういかがわしい意味で」

「分かった。
私は柳生くんお都合に合わせるから、
いつでも連絡を頂戴。」

ニッコリと微笑むと、
彼は、また咳払いをした。

-

「また面白そうな本、
教えてくれる？」

「ええ、いいですよ＿＿」

やはり私たちのきっかけは、
“本”から始まる。

それが偶然でも、
意図的に仕組まれたものでも。

繋がりの終着点は、
一冊の本から。