Diary【柳生比呂士】 (ページ28)

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第２６話　答えてページ28

「え、えっと…」

「……どうぞ。」

放課後、
私がいつものように図書室に居ると、
勢いよく扉が開いて
あの三つ編み少女が立っていた。

その子は、「えっと」とだけ繰り返し
目がかなり泳いでいる。

謝罪、でもしに来たのかな。
別に私はもういいって言ったのに…

私はため息をついて、
隣のイスを引いて、彼女を手招きした。

彼女は、そそくさとそこに来て座る。

「……私に何の用？」

「あ、とりあえず今日はごめんなさい！」

彼女が頭を下げた瞬間、
右の三つ編みが、顔面に直撃。

「…っ!!」

「はっ!!
そ、そんなに泣くほどだったの？！
ごめんね、気づかなくて!!」

必死になる目の前の彼女は
一体何でひよりが涙目になっているかなど
分かっていない。

だから頭を下げるたびに、
何度も髪の毛が顔に当たっている事など
気づいていないのだ。

「ほ、ほんとうに」

「もう、良い。
謝らなくて良いから、帰って。」

彼女を図書室から追い出して
私は深い溜息を付いた。

「めんどくさ…」

ガチャリ、と、扉の鍵を閉めた。
本当は閉めてはいけないが、
先ほどの子は、絶対にまたここに来るだろう。

「明日もここに来たら、
また今日見たくすればいいか。」

さて、と、図書室を見渡す。
中等部よりも、少し広くなった部屋。

右も左も後ろも
見渡せば全て、本、本、本＿＿＿＿＿＿

「……なんだろ。」

何故だか分からない。
だけど、やりたい事がある。

私は席に着いて、カバンの中から
１冊のノートを取り出した。

パラパラとページを捲り、
最後の日付が記された次のページに、
私はペンを滑らせた。

「＿＿＿＿よし。」

時計を見ると、
下校時刻１０分前。

「あ、やばっ！」

私は筆箱をしまい、
鞄を肩にかけて、入口まで走る。

「………どこに、置こうかな。」

中等部のときに目印にしていた本は
高等部にはなかった。
だから、置く場所に困るのだ。

「私は『龍は眠る』が好きですね。
紳士さんは、お好きな本とか、
おすすめの本とかはありますか？』

「そうですね、
私はアガサ・クリスティの『アクロイド殺し』
という本が好きですね。」

「『アクロイド殺し』ですか、
今度、探して読んでみますね。」

ハッと、思い出した会話。

確認のため、
もう一度日記を見てみると
全く同じ会話が、書かれていた。