第24話 毒物 ページ26
高校生活が始まって
ある日のこと。
「柳生君いますかー?」
教室に明るい声色の声が響く。
柳生は本を閉じて、その子のもとへと向かう。
「どうしましたか駿河さん。」
「あのね、かんそ」
「すいませんが用事を思い出したので、失礼します。」
キュッ、と、上履きの音が鳴り
方向転換をすると、
駿河が目の前にやってきて、“それ”を突き出す。
柳生は、駿河の差し出す“それ”が何かを分かっているため
視線を逸らして、「失礼します。」と丁寧に断るが、
「え、柳生くんお腹すいてない?
もう3時間目始まるし、小腹には良いでしょ?」
「お気持ちだけ受け取りましょう。」
「気持ち、受け取ってくれるんでしょう?
これが私の気持ち!ほら、食べて!」
柳生は、「しまった。」と心で思った
「お気持ちだけ」つまり、駿河は思いを込めて
目の前にあるものを作ったのだと言ってじた。
ズイっと目の前に出される“それ”は
昨年の文化祭の時よりも、何かが進化していた。
これは、嘔吐だけでは収まりそうにないな。と
確信づいたため、丁寧に断り続けた。
「柳生くん紳士でしょ?!
紳士なら、さあ、これを食べて?」
「い、いえいえいえ、け、結構です。」
「ほら、食べたいよね?
あ、もしかして、食べさせられたいの?
もー柳生くんたら。」
語尾にハートがつきそうな勢いで言われ
柳生は頬が引きつる。
いい加減、帰ってくれないか。と
駿河は口だけでは絶対に動かない人だとは知っている。
いつも彼女を止められるのは、柳だけ。
その肝心な柳は、此処にはいない。
「柳生くん、はい、これあげるから!」
そう言うと、
すごい勢いで手が伸びてきたため
柳生は急いで避けた。
危ない危ない、と、安堵の溜息を付いたが
柳生の耳には小さく、ポキッ、と音がしたのだ。
それも、自分の後ろで。
「ああっ!!」
駿河の手にあったものは、
自分よりも遥かに背の低い小野寺の口の中へ
彼女は表情を一切変えずに、ただ、目を見開いていた。
「_____美味しいでしょ?」
恐る恐る、駿河は尋ねる
ひよりは咀嚼物がなくなると、
一旦動きが停止し、
「ほ、保健室に運びましょう!」
バタン、と、音を立てて
教室の床に倒れた。
『被害者3人目』
絡まれていた柳生も、巻き込まれたひよりも
互いに何人目かわからない被害者。
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作者ホームページ:なし 作成日時:2015年10月25日 21時