第20話 未知 ページ22
「俺の勘じゃと、
多分ノートに何も
書かれておらんぜよ。」
仁王にそう告げられ、
柳生は黙ったまま、目を伏せた。
仁王の予想は
恐ろしい程よく当たる
だから柳生は
図書室への足を速めた。
静かな西棟の図書室の扉
ガラガラッ!と音を立てて開けると、
「_____やあ、柳生じゃないか。」
「幸村くん…」
幸村は柳生だと確認すると
直ぐに視線を下に下ろして、ペンを走らせる
柳生は息を整えて
いつもの本棚の前に来る
えーっと、と、日記を探していると
幸村が声をかけた。
「ねえ柳生、」
「はい、なんですか?」
「交換日記って、したことある?」
「は、はい?!」
柳生は探し当てた日記を
本棚に押し込んでしまった。
幸村は手を止めて
柳生の方を見ると、クスッと笑う。
「その反応だと、
したことあるんだね。」
「え、ええ、まあ___」
何とも言えない、
曖昧な返事をすると、幸村は
「冗談だから気にするな」と言った。
だが、どう考えても、
今のタイミングで言われると、
なにか計ったようにしか思えなくて。
「……さて、と。
柳生、君はまだここに残るんだろう?」
「はい。」
「じゃあ鍵、頼んでも良いかな?」
幸村から鍵を受けとると
いつも座っている席に荷物を置き
本棚から日記を取り出してページを捲った。
日付は、
柳生が合宿を行く前日で止まってる
下の方を見てみるけれど、
書かれた形跡も全く無い。
ノートを閉じて表紙を見ると
少し埃が乗っかっていて手で払った。
彼の言った通り、
本当に続きは書かれていないんですね。
彼女は、もう書いてくれないのでしょうか。
下唇を噛み、自分に舌打ちをした
なんだか自分にイラついて仕方なかったから
彼女との距離は
振り出しに戻されたから。
「バカですね、私も……」
一言だけ、
一言だけでよかったのに
そうすれば今でも、
このノートに、言葉は綴られていたはずなのに
「………これで、
お別れなんでしょうか?」
ノートに呼びかけた柳生の声は
図書室に虚しく響き渡った
まるで、
もう
誰もいない、とでもいうかの様に
「__________奇跡、起こりますかね。」
柳生は日記を持つ力を強めた。
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作者ホームページ:なし 作成日時:2015年10月25日 21時