【呪術廻戦】ギャルと呪術-3-

143：ギャルともどかしさ ページ43

私がいる事忘れてるな、横で思った七海は外に出て行こうとするが、Aにとっ捕まえられ早々に諦めた。

一体、呪術界最強の男は通話口の向こうでどんな顔をしていることやら。
生徒には、きっと見せられないんだろうな。
七海は”帰りたい”の意を含んだため息を吐く。


というか、プライドが高いあの人が……やっぱりAさんの前だとここまでになってしまうのか。


だから、その、と口をもごつかせている五条。

先に口を開いたのはAだった。


「そんな事、思わないけど」


通話口の向こうが静かになる。
Aは気にも留めず、そのまま話し続けた。

「悟がそんなこと聞いて信頼してないって思うほど、私が悟の事知らない訳ないじゃん。何年一緒にいると思ってんだ、後輩」

Aはふっと笑う。

「悟はさぁ、大人になって余計なこと考えるようになったのが玉に瑕だねぇ。そんなんで嫌いになるなら、とっくの昔になってるっつーの」

分かったか、後輩君。と、Aは最後に言った。


「君以外に、私の隣は勤まんないぞ」


Aが言った後も、暫く通話口は静かだった。
でも、確かに通話口の向こうで息を呑み込む音は聞こえた。
Aにそれが聞こえていたのかは定かではない。

漸く、五条が口を開く。
その声は、彼の事を昔から知っている七海でさえも驚くほど、穏やかな声音だった。


『うん。やらないよ、誰にも』


AがAで良かった。
五条は最後言い残すと、その後の言葉を聞く事もなく通話を切った。

七海は暫くの間、放心状態であった。
凄いやりとりを見てしまったな、と。
逆に、自分以外の人間が立ち会わなくて良かったとも思う。

自分以外の人間ならば、もどかしくて鬱陶しい気持ちに襲われそうだ。

なぜ、この先輩二人はなんでも出来るのにどこまでも馬鹿なのだろう。
無自覚は罪だな、七海はAに目を向ける。

「…七海、」

Aが、携帯画面を眺めたまま口を開いた。

「なんで、私大切にされてると思う？」

「…は？」

思わず、七海は尋ね返してしまった。

「いや、今ふと思って…。うわぁ、私大切にされてんなぁって。本物の恋人じゃん…って」

Aはむず痒い気持ちを分散させようと、自身の首を撫でる。

「でも、私ら恋人違うし…というか、後輩って先輩のことそんなに大切にしたがるか…？って、思い始めちゃって…」

Aは、そのまま「今から、可笑しい事言うわ」と付け足した。

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