【呪術廻戦】ギャルと呪術-3-

112：ギャルと例の件 ページ12

｢悪いね、僕だけで。先輩にも会いたかったんじゃない？｣

嫌味ったらしく五条が言う。
楽巌寺は何も返さない。
いや、敢えてだろう。

楽巌寺はAと対立する上層部のうちの一人だ。
それも、彼女がまだ16の時に対立が始まった。
二人の溝は五条よりもうんと深い。

五条は至極無礼な態度を改めず言葉を続ける。

｢楽巌寺学長が来るなら、お礼をしなくちゃと思ってさ。“その節”についてね｣

にたりと笑う。
楽巌寺は立派に蓄えた顎髭を撫で、｢はて…｣と呟いた。
その対応に五条は鼻で笑う。

｢とぼけんなよジジイ。先輩が『虎杖悠仁の件』について怒鳴り込んでっただろ？それすらも忘れちゃったぁ？やだねぇ、歳だねぇ｣

鼻につくほどの軽薄さ。
楽巌寺はため息をつく。

｢綺羅の娘も、お前も……最近の若者は揃って敬語も使えんのか｣

｢はなから敬う気がねーんだよ。最近の老人は主語がデカいね〜｣

ピリピリとした空気が漂う中、三輪が話に割って入った。

｢ちょっと、これは問題行動ですよ。然るべき所に報告させて貰いますからね｣

本当は、五条家のあの五条悟を生で拝見できて飛び跳ねたい気持ちでいっぱいだったが、楽巌寺の前である。
そんな事出来るわけがなく、三輪は自分が思う精一杯の正義感を見せた。

｢ご自由に。僕も、先輩の立場を乱用するつもりはないけど、報告したところであの人が反発する。この程度の問題、対して意味無いでしょ。先輩は僕よりも立場が上だ｣

長話をするつもりないし、と五条は付け足した。
言われた三輪は顔ではムッとした表情をしたが、本当は床に転げ回りたい気持ちでいっぱいだった。

何より、可借夜Aと五条悟が先輩後輩の関係であるという事実が、彼の発する“先輩”に全て凝縮されている気がし三輪はニヤつく顔を引き締めるのに必死だった。
各々の確立したスペックを持つこの二人が、口調から察するに信頼し合っているというのが心に刺さるのだ。

五条は組んでた足を開き、話し合う体勢に変える。

｢昨晩、未登録の特級呪霊二体に襲われた｣

｢ほう、それは災難じゃったのう｣

表向きはそう言っているが、心から思っているようには聞こえなかった。
五条もそれは承知の様子で、特に冷静さを欠くことなく返す。
元より、五条が言いたいのは“そんな事”ではないのだから。

｢勘違いすんなよ。僕にとっては街でアンケートを取られたぐらいのハプニングさ｣

三輪が特級の五条にしか言えない台詞を噛み締める。

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