225:チームプレー ページ27
やばい、と思った時にはもう遅い。
手を伸ばせば辛うじて柵を掴むことが出来たが、救出も困難になった。
片手には気を失ったゴン、そしてもう片手は波に押される自分に加えてゴンも居る。
片手に人間二人の負荷がかかっているのだ。
こんな事なら針を抜けば良かった。
海水を何度も呑みながら、それでもAは片手で引き上がろうとしていた。
腕が肉離れを起こしそうなくらい力を込め、必死に柵へと体を近づける。
踏ん張って引き上げようと奮闘するその時、波に乗ってやってきた木片がAの足を切りつけた。
「…ッッ!!」
思わずAは腕の力を緩めてしまう。
その瞬間、全ての力が抜けた腕と肩は重さに耐えきれず遂に“バキンッ”という音を響かせた。
「〜〜ッ!??」
Aの視界は一瞬にしてチカチカと瞬き、骨の中に音が響き走った。
肩の関節が外れた。
痛みに鈍感でも、外れた関節の痛みは比じゃない。
外れた腕には相変わらず重さの負荷がのしかかり、やれるものなら腕をちぎりたい気分に襲われた。
指に力が入らない。
一本、二本、指が外れていく。
ダメだ、ゴン君を殺しちゃいけない。
ゴン君はキルの友達だ。キルの友達なんだから、私が殺しちゃいけない。何人たりとも彼は殺させない。
たとえそれが、自然の猛威だとしも。
Aは微かに残る力を集中させ、ゴンを甲板の中に投げ入れた。
A自身の生と引き換えの行動だった。
残りの指が外れ、波に飲み込まれる瞬間____。
「無理しちゃ駄目って言っただろ♤」
暗い海の中から、その手はAをずるりと引き上げた。
満身創痍に力が抜けたAを彼は抱える。
Aは薄く目を開けて、彼の顔を見るなりふっと口元を緩めた。
「来てくれると思ってたよ………ヒソカ君」
ヒソカはやれやれと眉を下げ「君の無茶は今に始まった事じゃないからね♢」と返した。
Aはヒソカの言葉に、にへと力無く笑ってみせる。
「馬鹿ね、貴方が来てくれるの分かってるから無茶するのよ」
ヒソカは瞳を小さくさせた。
今の言葉。聞いた瞬間、心臓がぐっと熱くなった気がした。
なんと言えば正解だろう。
確信的な、何かを突かれた感じ。
Aは固まるヒソカを気にも留めず、「そうだ、ゴン君」と思い出すと彼の腕から抜け出た。
傷ついた足でひょこひょこと駆け寄り、ついでに外れた肩を治す。
戻った腕を揉みながら、Aはゴンの傍らに膝を着いた。
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鼻毛太郎(プロフ) - ポテトさん» し、した…!!!って感じですよね…!絶対無茶苦茶な会話してますよ…おわーーテスト頑張ってください;;テスト明けいっぱい楽しめるよう、沢山お話作っておくので…!いつも応援されている身なので、今回ばかりは私が応援を!頑張って!! (2021年5月28日 19時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ポテト - きゃーーーー(/ω\)キャー〜ついに、ついに、キッッッッッッッッスですか。確かに、早く旅団との絡みもみたい(*´-`)クロロと4人での会話なんて、めちゃくちゃテンション上がりますo(*≧∀≦)ノただ、テスト期間なのでこれからコメントするのが、少なくなりそうです(..) (2021年5月28日 16時) (レス) id: 6f62e33b14 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ポテトさん» そうなんですよね…!意外と真面目な戦闘シーンって無くて、今後もちょくちょく出てきます…!たまには2人とも動ける人なんだから、目一杯動いてもらいたくて! (2021年5月26日 23時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ポテト - ヤバイ、かっこいいぃぃぃぃ\(^-^)/ヒソカとの真面目な戦闘シーンって、今までなかったからすごく興奮しました(*´-`)『その時…』って何があったのぉぉぉ (2021年5月26日 19時) (レス) id: 6f62e33b14 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - ポテトさん» 絶対2人に「それは無理がある」って言われるけど、「は?」って言って黙らすんだろうなと書きながら思いましたね笑数話殺伐とした内容が始まりますが、殺人鬼と暗殺者の真骨頂だと思うのでお楽しみに…!!! (2021年5月24日 22時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2021年4月14日 1時