499:ギャルと対話 ページ49
____。
「A…、」
虎杖とAが七海と対面する数刻前、二人は渋谷構内を走り救援を求める者を探していた。
今絶望するぐらいなら、その時間誰かを助けた方がずっといい。
Aの言葉だ。
ただの何事もない人間が言っていれば、この時ばかりは虎杖も「お前に何がわかる」の一言ぐらい言っていたかもしれないが、Aの境遇を思うと何も言えなかった。
誰かを助けてやることでしか現在自分を保っていられないのは虎杖も一緒だ。
抱きしめたAの背に腕を回し、強く抱き締め返すと虎杖は小さく、しかし強い意志を含めた声音で
「うん」
と一言返した。
「なに?」
走りながら、冒頭の呼び掛けに答えるA。
「いや、対した話じゃないんだけど、左目…痛ぇの?」
虎杖がふと訊ねると、Aはハッと我に返ったような顔を見せて手を引っ込めた。
その行動に、虎杖は「あっ、悪ィ…!俺聞いちゃいけないこと聞いた?」と急いで述べると、Aは笑って首を横に振った。
「治さなくても良かった傷があったんだけど、宿儺の奴が全部綺麗にしちゃったから」
ごめん、言われるほど左目触ってたと思ってなかった。
そう言って、Aは眉を下げ珍しく情けなさそうに笑った。
それがあまりにも見慣れなくて、それにそんな所に傷があった覚えもなく、虎杖は曖昧に返事をしてAの以前の姿を思い描かせる。
「悠仁さ、」
今度はAが切り出した。
思考を巡らせていた虎杖は、思わず少し遅れて返事をする。
「え、あ、う、うん」
「宿儺から何か聞いてない?」
構内で、二人の走る音が反響している。
こんなにも大きな音で反響しているというのに、妙な静寂を感じるのは何故なのだろう。
虎杖は少し考えて、「実はさ、」と切り出した。
「前に、少年院で心臓抜かれた時…覚えてる?」
「覚えてるも何も、凄い怒ったから流石に覚えてるさ」
大袈裟にAに言われて、虎杖「そうだったそうだった」と少し笑う。
何とかなったとはいえ、人を助けるために宿儺に体を盗られて、その上勝手に死んでしまったことをAは怒ってくれた。
その怒りは、虎杖が危険を冒したからではなく、残された伏黒や釘崎の気持ちを思って怒ったのだと分かった時は、本当にこの人はいい人なんだなと感じたのを虎杖は覚えている。
「その時、俺宿儺と会ったんだ」
Aが、横で小さく息を飲んだのが分かった。
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プルメリア - ありがとうございます!頑張りますね! (2023年1月9日 7時) (レス) @page5 id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - プルメリアさん» 出来てますよ…!多分、宿儺のやつですかね…?まだ中身を確認していないので、あれですが投稿自体は出来てますよ…! (2023年1月8日 20時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - えっと、あの、忙しかったらいいです!ただ、きちんと投稿できているかだけ...お願いします... (2023年1月8日 20時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - 私、試しに投稿してみたんですが...きちんと投稿できているか心配でして。少し確認してくれませんか? (2023年1月8日 20時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - 本当に嬉しいです! (2023年1月8日 14時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2022年11月27日 22時