498:ギャルと5分30秒の楽園 ページ48
死体の山の中、無力に佇む。
もういいだろ、と体が告げていた。
もういいだろ、と目の前の人の形をした呪いが告げていた。
「居たんですか」
心臓に向かって真っ直ぐ伸びた片手に躊躇う事無く、淡々と七海は訊ねた。
目の前の真人は、呪いにしては爽やかすぎる表情で「いたよ、ずっとね」と七海の言葉に返す。
「ちょっとお話するかい?君には何度か付き合ってもらったし」
絶望を塗り固めて出来たくせに、よくそんなことを言えるものだ。
七海はもう、言葉を返す力も残っていなかった。
疲れた。
疲れたんだよ、灰原。
灰原、Aさんが疲れない理由が分かったよ。
逃げたくせに、やり甲斐だとかいう曖昧な理由で戻ってきた私とAさんでは根本から大きく違うんだ。
あの人は、誰かのために地獄に落ちる。
誰かのために戻ってくる。
誰かのために祓い続ける。
それを放っておくなんて、可借夜Aではないと本人が思っているから。
あの人は、誰よりも可借夜Aなんだ。
その単純で強さに満ちた希望だけが、あの人を何度だってこの世界に蘇らせる。
私は、それにはなれない。
いや、なろうなんて元から思っていない。
ただただ、それを頼りにしていたんだ。いつだって。
灰原、私はもう疲れたよ。
その時、目の前に灰原が現れた。
彼は何年も前に死んだのだが、その時ばかりは間違いなく自分の前に現れたのだ。
あのいつもの忘れもしない明るい表情を浮かべて、彼は何処か一点を指さす。
彼の示す先を見ると、そこには今しがた訪れたであろう青年____虎杖悠仁が居た。
それと。
あぁ。
思い出した、Aさんとの会話。
煙草、一本吸うか聞かれたんだったな。
早死したくないからいらない。
そう言ったな。
「…」
こんな時なのに、私は笑ったんだ。
虎杖君の後を追うようにやってきたその人を見て、私は安心したんだ。
この人が来たなら、もう大丈夫だろう。
自分がすることは何も無い。
虎杖君もいる。
大丈夫だ。
自分の役目は、もうここで終わりだ。
後悔。
後悔か。
色々あるが、一つ間違いなくあるとすれば____。
「こんな事なら、煙草の一本貰っておくんだったな」
虎杖君。Aさん。
「後は頼みます」
爆ぜる。
南国。
私はあの、緑色の瞳のような南国に行きたいんだ___。
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プルメリア - ありがとうございます!頑張りますね! (2023年1月9日 7時) (レス) @page5 id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - プルメリアさん» 出来てますよ…!多分、宿儺のやつですかね…?まだ中身を確認していないので、あれですが投稿自体は出来てますよ…! (2023年1月8日 20時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - えっと、あの、忙しかったらいいです!ただ、きちんと投稿できているかだけ...お願いします... (2023年1月8日 20時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - 私、試しに投稿してみたんですが...きちんと投稿できているか心配でして。少し確認してくれませんか? (2023年1月8日 20時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - 本当に嬉しいです! (2023年1月8日 14時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2022年11月27日 22時