488:ギャルと拉致被害 ページ38
A自身、何故あの呪いの王に対して『心配』なんて感情を抱いたのかは不明であったが、Aは無意識にも本能で冷や汗を浮かばせてしまっていた。
穴の奥は静かだった。
嵐の前の静けさ。だろうか、なんて思ったその時。
「来い」
「はぇ?」
自身から漏れた声のなんと間抜けなことか。
なんて思うのも束の間、いつの間にかAの隣に降り立っていたかと思えば、今度はAの首根っこを掴み持ち上げるなり、ひょいと軽く投げて脇に抱え直す。
いや、私これでも成人どころかかなり大人なんですけど。
そんな赤子どころか動物みたいな持ち方ある????
「あの、ちょ、____ぎぇッッッ!!!!」
一体何するつもりだと訊ねるよりも早く、有無を言わさず宿儺はAを抱えたまま駆けた。
その速度、なんと早いことか。
ジェットコースターがどうこうの話ではない。
Aの悲鳴をその場に置き去りにしたといっても、なんら間違っていないだろう。
三連続、ビルの空いた穴に宿儺が再び戻ってくる。
先程と違うのは、Aを横に抱えている事だ。
「あ、あらぁ……」
思わず、Aは目の前の魔物に対して情けない声を漏らす。
至近距離で目の前にした魔虚羅の迫力は凄まじく、宿儺が抱えていなければ「こりゃダメだ!」と退散していたところだ。
悲しいかな。今この状況で逃げられる術はない。
災害レベルの輩相手に、術式もない呪力もたかが多く見積もって三級程度の自分に何が出来ようか。
「A、奴の能力はなんだ?」
「は!?詳しいことは、知ら_____、」
言いかけた矢先、間髪入れず魔虚羅の拳が飛んでくる。
思わず言葉を切って「やばいやばいやばいって!!?」と、抱えられたまま体を小さくさせるAだが、宿儺がわざわざ気にしてくれる訳でもない。
「舌を噛み切りたくなければ、その喧しい口を塞いでいろ」
または、あんまり喧しいなら俺がこの戦闘中だけ舌を切ってやる。
どうせ反転術式で治してやれるのだから。なんて言われて、Aはすぐさま口をジッパーで閉じる素振りと共に静かにすることにした。
拳を受け流し、蹴りを宿儺が繰り出すと魔虚羅の顎にヒット。
これには思わずグラつく魔虚羅だが、宿儺の攻撃はこれだけでは止まらない。
そのまま、人間一人を小脇に抱えているとは思えない身のこなしで魔虚羅の顔を跨ぐように飛び乗った。
そして、魔虚羅の顔面を掴み上げる。
「お返しだ」
同時、空気が凪いだ。
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プルメリア - ありがとうございます!頑張りますね! (2023年1月9日 7時) (レス) @page5 id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - プルメリアさん» 出来てますよ…!多分、宿儺のやつですかね…?まだ中身を確認していないので、あれですが投稿自体は出来てますよ…! (2023年1月8日 20時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - えっと、あの、忙しかったらいいです!ただ、きちんと投稿できているかだけ...お願いします... (2023年1月8日 20時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - 私、試しに投稿してみたんですが...きちんと投稿できているか心配でして。少し確認してくれませんか? (2023年1月8日 20時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - 本当に嬉しいです! (2023年1月8日 14時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2022年11月27日 22時