481:ギャルと釈迦の掌 ページ31
そして、次の瞬間にはふわっと膝の力が崩れるように抜け落ちた。
固いコンクリートの上に両膝から落ちる。
鈍い痛みが、膝から全身へ一本の鉄柱を入れられたかのように走った。
だが、そんな痛みを感じない程、痛みさえも受け流してしまうほど今のAの精神はガタガタに崩れかかっていた。
手が、口が、震える。
目の前の青年の手を、震える手で触れる。冷たい。
ぐったりとした冷たい手。
理解した同時、Aの瞳からついにボロボロと大粒の涙が溢れた。
「め...ッ、恵、恵ッ!!?だめやだ、息して、だめ、だめだめだめ…ッッ!!!」
Aの心は、限界だった。
渋谷の騒動が始まってから今まで、Aの心は本人の自覚は無くともゆっくりと時間をかけ、緩やかに精神が汚染されていっていた。
そして今、伏黒の姿は彼女の崩壊寸前の心に王手を打ってしまったのだ。
「死んじゃだめ...ッ、嫌だ、死んじゃだめだッ、だめ、息して、恵ッ、恵...ッ!!!」
大粒の涙は雨のような速度で頬を伝い、血を混ぜてボタボタと伏黒の動かない体へ落ちる。
振り乱し、喉が裂けるほど彼を呼ぶAに冷静さはない。
「だめ、死ぬな死ぬな死ぬな…ッ!!」
絶望の匂いが立ち込める。
絶望は神様の顔をしていない。
後ろから、重面春太が「女ァッ!くそ、聞いてんのかよ…ッ!!ふざけんな、なんとかしろよッ!!」と叫ぶ声が聞こえたが、理性を失ったAの耳には何も届かない。
現れた絶望の塊、いやその権化にすらAは意識を向けない。
ゆっくりとAの叫ぶ声に反応し、重面春太からAへと標的を変え歩み出す絶望の権化。
地をゆっくりと、しかし重く確実に踏み締め、Aの体をどんどん影で侵食していく。
「お、女…ッ、馬鹿かお前死ぬぞ…ッ!!?」
重面春太が叫ぶ。
しかし、Aは、どんな呼びかけにも状況にも答えなかった。
彼女の頭の中には、自分の生き死が存在していなかった。
「お願い、恵…死んじゃだめだ…お願い、お願いだから…死ぬな、死んじゃだめ…だめ…」
誰か。
消え入りそうな声が漏れる。
「誰か…ッ」
その時、何者かがAの横に立った。
Aが顔を上げる。
何者かと目が合った。
その時、Aは相手が自分がよく知る人物ではないのだとすぐに察した。
顔中の紋様がそれを教えてくれた。
だけど、それでも、Aは願った。
“彼”だから、願った。
「助けて」
1208人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
プルメリア - ありがとうございます!頑張りますね! (2023年1月9日 7時) (レス) @page5 id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - プルメリアさん» 出来てますよ…!多分、宿儺のやつですかね…?まだ中身を確認していないので、あれですが投稿自体は出来てますよ…! (2023年1月8日 20時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - えっと、あの、忙しかったらいいです!ただ、きちんと投稿できているかだけ...お願いします... (2023年1月8日 20時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - 私、試しに投稿してみたんですが...きちんと投稿できているか心配でして。少し確認してくれませんか? (2023年1月8日 20時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア - 本当に嬉しいです! (2023年1月8日 14時) (レス) id: 6b30db01b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2022年11月27日 22時