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毒の道を抜け、一旦休憩することにしたキルアとA。キルアが目を瞑っていると、Aが頭を撫でた。眠ったと思ってるのだろうか。
キルアが薄ら目を開けていると、向かいから囚人が現れるのが見えた。
すっかり気が抜けていた。動こうとするキルアだったが、毒のせいで体が重い。
『ちょっと待っててね』
Aはキルアを横に寝かせ、呟いた。
驚いたのはその後だった。Aが殺気を放つと囚人達が逃げ帰ったのだ。
間違いなかった。サシでの勝負のときにも一瞬だけ感じた殺気。兄貴が放つ嫌な空気にそっくりなのだ。違うのは真冬のように寒く感じる感覚。
逃げろ__兄貴に鍛えられた本能が警告する。ただ歳も変わらない少女が怖かった。
『あれ?キルア起きたんだ。もう大丈夫なの?』
振り返ったAはいつもと変わらない表情だった。けれど、今のキルアにとってそれが恐ろしく思えた。
「…………A」
『何?』
「あんた何者だ?」
Aの青い瞳が大きく揺れた。そして静かに哀しそうに答えた。
『普通の人間だよ』
やっば隠し事かよ……__そのときキルアは無性に腹が立っていた。
囚人とサシで闘った時だって、Aの動きが見切れなかったことにイライラしていた。速さには自信があったから。
単に、自分はAのことを何も知らないから。Aと友達になれたら良いななんて思ってしまったから。
イライラが重なって落ち着かなかった。気付けば、Aの手首を強引に引っ張っていた。
『キルア?急にどうしたの?ちょっと速い…………っ痛!!』
振り返って見れば、Aは足を押さえていた。
『私はキルアのこと嫌いになったりしないから、心配しないでね』
何故か、飛行船でのAの言葉が脳裏に浮かんだ。戸惑った表情のAと目が合う。
Aはこんなオレのことを信じてくれたのに……
キルアはようやく違和感に気付いた。
「A、その足……」
『ちょっと、隠し扉から落ちるときに、……ひねっちゃったり?』
「バカか、そういうことは早く言えよ! 一蓮托生なんだから」
キルアは大きい声を出した。すると、Aはくすくすと笑い始めた。
「何だよ」
『良かった……いつものキルアだ』
「……ごめん」
『何で、キルアが謝るの?』
「いーや、なんでもない……」
Aが隠していることもあるかもしれない。でも、オレもAのこと信じよう__キルアはそう決心した。
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冬瀬(プロフ) - 作者です。誤字等、まとめて修正しました。 (2022年3月5日 9時) (レス) id: 033bbfc38e (このIDを非表示/違反報告)
冬瀬(プロフ) - 妄想癖さん» 質問ありがとうございます!光の加減で、白色(限りなく無色透明)に見えるイメージです(言葉にしがたい)。光の反射とかで頭皮は見えないはず 笑。。「宝石の国」のキャラクター達みたいな感じです(気になる方は調べてみて) (2021年2月16日 13時) (レス) id: d80ecf15a6 (このIDを非表示/違反報告)
妄想癖(プロフ) - 無色透明ってことは禿げて見えるんですか?! (2021年2月8日 0時) (レス) id: 36f953a85d (このIDを非表示/違反報告)
冬瀬(プロフ) - 作者です。ちまちま修正中。 (2020年2月27日 23時) (レス) id: d80ecf15a6 (このIDを非表示/違反報告)
しらほ(プロフ) - フォスさん» きっとトプ画のことですね??多分。一言添えていますがトプ画は雪兎様に描いて頂きました。とても可愛いですよね!! (2019年2月24日 23時) (レス) id: 5f12e77188 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冬瀬 | 作成日時:2018年8月15日 19時