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「A!」
テツ先輩が私の名前を呼ぶ。酷く疲れた、荒い息が混じった声。
少しだけ、その声に安心する。夕闇燈が心の中で呆れる。
「影山くん、殺すの?国王」
テツ先輩より先に、私は言わなきゃいけないと思った。
「私を殺さなくてもいいの?いずれ、影山くんの物になるこの国を滅ぼそうとしてるのに」
反逆者が国王の息子に向かって言う言葉ではない気がするが、それが、1番言いたかったことだ。
「……自分の気持ちより大切な国はないだろ。俺は、国よりお前の方が大切だと思う」
「…………ふ、それ、すごい恥ずかしい事なの気づいてる?それと、個人の事より国の方が大事だよ」
嬉しいけど、聞いていてすごい恥ずかしい。それを真顔で言われるのだから、照れ隠しでなくても笑ってしまうだろう。
「ね、他の皆さんも、それでいいんですか?私は、暴走して皆さんを殺してしまうかもしれない。裏切るかもしれないのに」
皆は顔を見合わせて、
「そしたらそれが運命だったって事だろ。で、そんな未来は見えるか?研磨」
「見えないよ」
泣き出しそうになる。
『残念だな。A、もう少しまともだと思ったのに。もう、要らないや。死んで?』
「夕闇燈。要らないのは、君だよ。
個人魔法、操作。夕闇燈の魔法を全て解除して」
最初から、自分でこの呪いは解けたんだ。魔法を使って、夕闇燈を強制的に出すことができた。でも、私は弱かったから、出来なかったんだね。私が独りになりたくないから、出来なかったんだね。
ねえ、もう、苦しまなくていいよ。
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作者名:凛花 | 作成日時:2017年1月9日 16時