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重い斬撃が放たれる。
ギィィィィンという音と共に、剣と剣がぶつかった。
魔導士には珍しい、剣使い。
「爆破符起動」
低い、全ての感情を恐怖に塗り替えてしまえそうな声で呟く。それだけで、その一言で頭の横で紙が小さく爆発した。
が、それは意味の無い魔力の消費だ。
魔物からの攻撃と魔力の全く宿っていない攻撃は全て夕闇燈が防いでくれる。
私が死んだと思い込んだ牛島若利は少し気を緩める。本当に大魔導士なのかと疑いたくなるくらいだ。
「さようなら、偉大な大魔導士様」
思い切り、剣を放つ。これは絶対に止められると分かっている。
「個人魔法、操作。彼の者の動きを操作する」
それで、もう動けなくなる。牛島若利の個人魔法が無効化ならダメだが、彼は有名になりすぎた。
「そこに、ずっと息ができなくなるまで居てくれる?」
返事は返ってこない。返事が出来なくしたのも私だ。
身を翻し、王宮に向かう。そこを崩して、あとは魔物に任せればいい。
私の目的は最初だけだ。王族への、復讐。
ここだけは、夕闇燈と利害が一致している。彼女もまた、王族に復讐したがっているから。
「……着いたよ。燈」
『本当?!ふふ。早くやりましょう』
「分かってるよ」
王宮の前に立つ。門を守っていなければならない傭兵は既に魔物によって殺されてしまっていて、門も破壊されている。
もしかしたら王族も死んでいるのかもしれないと思ったが、叫び声が聞こえたため、まだ生きているようだ。
『反逆の悪魔、ベリアルよ。今ここに』
悪魔だ。悪魔が現れた。地の底から現れ、世界を滅ぼす。
破滅の3大魔法なんて、夕闇燈は使わなかった。ブラックホールのようなものを作り出して、世界を滅ぼしたんだ。
悪魔を従えるために、爪で腕の皮膚を切り、血を出す。生贄のようなものだ。
「私に従え、ベリアル」
何も聞こえない。でも、何もしてこない。契約が、完了した。
『やりなさい』
私が王宮を見据えて、夕闇燈は言った。
始まったんだ、と見たままの事を思う。
『……駄目だ。中から魂の気配がしない』
「でも、これで民衆には恐怖が伝わるでしょ。充分じゃない?」
『まあね』
壊されていく王宮を見て、もう何も感じなくなっていた。それが怖くなって。
ふと、後ろを見る。
ああ、なんで。
出来れば、もう、誰にも会いたくなかった。救いになんて来て欲しくなかった。
話なんて、したくなかったのに。
「A!!」
なんで、来たんですか、テツ先輩。
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作者名:凛花 | 作成日時:2017年1月9日 16時