「もう少しで着くと思うと心踊る所がなくもないけど圧倒的に清涼剤が足りねえ」 ページ18
ドパンッ、と。
寄せては帰り、かと思えばまた新たな波が一層激しさを増して打ち寄せる。
何故沈まないのか、疑問に思う程簡素な木造の船は、荒れ狂い踊る波に好き勝手に振り回されていた。
そしてそうなると当然、内部も三百六十度縦横無尽にひっくり返され戻され回り回って、端的に言って大惨事である。
吐瀉物は壁に留まらず天井にまで飛散し、死屍累々の男共があちこちにぶつかって苦悶の呻き声を上げ、行く先々でご飯と望まぬ再会を果たしていた。
ぐわり、浮遊感が襲い掛かる。取り舵一杯のシーンか。だったらそろそろ収まるだろう。
船酔いはしていない。何より嫌なのは、最初偉そうに胸張って鼻高々だった野郎の撒き散らす吐瀉物だ。絶対触りたくない。さっきから回避するのに必死。
木箱やゲロ臭え毛布を駆使してどうにか我が身を守っていたのだが、いい加減に限界が迫って来ていたので、この転機は有難い。
最後っ屁とばかりに、胃液ばかりを口から吐き出しながら飛んでくる男を全力で避けながら、比較的、本当に比較的綺麗な位置に避難した。
『──で、何故ワタシに電話するか』
「だってだって! 船内くっさいしむっさいしあっついしきったないし、癒しが無くってぇ!」
『ハンター試験舐めてかかたお前が悪いね』
「んぐうぅっ……それを言われると何にも言えない……!」
今にも落ちて来そうな灰色の空から一転、遥か向こうの隅々まで晴れ渡った空の下。
背後にゲロまみれの野郎共を控え、愛しのダーリンのボイスをリッスンして何が悪いと言うのだ。
はあ、と呆れ切った溜息を吐くフェイ。紙越しに見るのと現実で見るのとじゃあ随分違うんだぞ、と声高らかに主張したい。
「あーもう……ちょっとフェイ『大好き』ってハート付けて言ってくれない?」
『は?』
「あっすいませんごめんなさい冗談すいません」
割りかし切実な願いも、すげなくたったの一音で一蹴され、私のHPはとっくにゼロ。ああ嫌だ、これだから船旅って奴は!
それじゃあ失礼しました、と言って通話を切り、塩分たっぷりの海水に晒された柵に背中を預ける。最初は忌々しかった単調な青が、今はこんなにも愛おしい。
今頃中では、ゴン君が重症人の介護に駆け回り、クラピカがハンモックですやすやスリーピングし、レオリオはえっちなお姉さんの本を読んでいるのだろう。この世界の将来が不安になるラインナップだ。人のこと言えないけど。
「さて今作中に一次試験会場に辿り着けるのだろうか」→←「もうパッと行ってサッとヒソカさん拉致ってビュッと帰れば良いんじゃないかと思えてきた」
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ロキ(プロフ) - エーミール少年が登場しとる笑 (2020年2月20日 21時) (レス) id: 2da3670e3a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - みーたんさん» わーい閲覧ありがとうございますー! うーん…原作軸に沿って動くだけでかなり暇がないので、子育てさせるなら捨て子拾うとかそんな感じになりますね (2017年3月26日 15時) (レス) id: a73d01fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
みーたん - 更新されたの見ました!後、質問です。将来フェイと夢主の間に子供とかできたりするんですか。フェイと夢主の子育てシーンとか見たいです (2017年3月26日 9時) (レス) id: 46104a2fe8 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 紫月さん» この小説ももう49話埋まってしまったよ…。言うてやったのは膝カックンだけどね!(ショボい)元の世界についてはまだ言及しないかな〜…といった感じ。ただどっかのタイミングで一時帰界させないとなあ、とは考えてる所! (2017年3月26日 0時) (レス) id: a73d01fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - みーたんさん» ああああありがとうございます……!!! (2017年3月26日 0時) (レス) id: a73d01fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
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