43話 ページ8
伸びた髪から滴る水、3人は「しまった」という顔をしてそれぞれ1音漏らした。
「「あっ/いっ/うっ」」
後退する3人に僕はどうにでもなれ、と水をかけた。
「えぇぇぇいぃぃ!」
「「おあぁぁぁ!?」」
どうせ濡れたのだ。こうなったら極限まで濡れてやる。先程の「風邪を引くから…」の心配は何処へ、僕は3人と同じように互いに水をかけ合う。頭から爪先まで余すところなく水をかけ合った。
「ただいまー」と声が4つ聞こえ、出迎えようと玄関に向かうと、何故か子供達だけではなくAも全身が濡れていた。水も滴る…なんて一瞬考えるが、急いでタオルを4つ持ってきてそれぞれの頭に乗せた。
何がどうなってこうなった?
全身びしょ濡れの意味に首を傾げながら子供達を拭いてあげる。だが拭かれながら青い顔をする子供達を見て大体察しがついた。
「それで、元凶は誰です?」
私が聞けば3人同時に口を開いた。
「「銀時!/高杉!/ヅラ!」」
「ふむ、なるほど。そうですね、ではこうしましょう」
にっこりと微笑えば、それと比例するように顔を青く染める子供達。これから起こることが大体察しがついたのだろう。後退りをしようとし、ザリッと砂を踏む音がした。それと同時に私は彼らにゲンコツを落とした。
「まったく…風邪を引いたらどうするんですか。両成敗です」
埋まった彼ら、にそう言っても返事は来ない。
「Aもですよ。一緒になって遊ばない。風邪を引いたら大変ですよ?」
Aもびしゃびしゃに濡れており、理由を聞けば「僕、心は少年だから」と自慢げに言われる。よくわからないが、納得してしまうのは本当に少年のように楽しそうに笑うからだろう。その笑顔にきゅっと心臓を掴まれる。あぁ好きだな、思わず出そうになる声を飲み込み、お風呂に入るように勧めた。
結局許してしまうのは惚れた弱みと言うやつなのだろうか。これは銀時達に贔屓だと言われてもしょうがない。遠くなるAの背を見つめ埋まる銀時達を引き抜いた。
走ったあとみたくドッドッと鳴る心臓を押さえる。まだ風呂に入っていないのに熱を帯びる顔に触れる。
あの慈しむような優しい笑顔が頭から離れない。心筋梗塞だ、そう思ってしまうくらい心臓があの一瞬で止まる。拒絶反応ではない、松陽のことは好きだ。僕を救ってくれたから。ではこれは何なのだ?困惑が頭を支配して考えがまとまらない。
僕は助言を求めるように「ぎんときぃ…」と情けなく呟く。まるで僕が僕ではないみたいだった。
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作者名:月光 | 作成日時:2018年8月4日 0時