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71話 ページ36

夏を少しだけ恋しく思う秋のそよ風にそろそろ襟巻きや厚手の羽織りを出しておかねばと感じる。肌寒さを感じる僕とは打って変わって子供達はそんなことを気にすることなく、秋を楽しんでいるようだった。
「先生〜これなぁに?」
「萩という植物ですよ。小さく可憐ですね」
「松ぼっくりとどんぐり見つけた!」
「おや、そんなに大きなものもあるんですね。私にも教えてくださいな」
じっとしているのも寒いからと、紅に染まる楓の絨毯を踏み子供達と松陽を眺めていた。幼少からこういう情趣を理解する心を身に着けておくのはいいことである。今度和歌でも教えてみようかと考えているところに、木の根本を凝視する銀時、晋助、小太郎を見つける。僕は何を見ているのかと、3人の上からそれを見下ろした。
「何かあったか?」
「エビフライ落ちてた」
「は…?」
こんなところでエビフライ?そんなわけと思いつつ、銀時が僕に差し出したそれを受け取る。それは小さく見たことのある形をしたものだった。
「リスが松ぼっくり食った残骸だな。はは、確にエビフライみたいだ」
「リスって松ぼっくり食うの!?そもそも松ぼっくりって食えんの!?」
「まだ青い時期にならそのままジャムや酒にして食えるらしい。実は米と炊いたりするらしいな」
先人は何でも食う、そう付け加えると紅葉狩りをしていた子供達も集まってくる。そして口々に「エビフライだ…」と呟くので可愛らしいと感じた。自身の食事の残骸にこんなにも注目されリスも驚いている頃だろう。
「何を見てるんですか?」
後ろから松陽が覗き込み不思議そうにする。僕は指先でそれを摘んで見せた。
「松ぼっくり」
「……もう1回言ってくれませんか?」
「? 松ぼっくり」
「かわいい」
「何を言っている?」
ちょうだい、ちょうだいと手を伸ばす子供たちにそれを渡しながら、隣の頭の溶けた男に球果と呼ぶぞと言えば嫌そうな顔をされる。球果に失礼だと思わないのか。

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作者名:月光 | 作成日時:2018年8月4日 0時

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