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68話 ページ33

困っている人を見過ごせない、その心はとても素敵なものだが少しだけ心配になってしまう。自己犠牲精神の強い人だからどこかで無理をしないか。もっと言えば私のいない所で無理をしないか。そう思ってしまうのだ。
引きつつもAによる土産で浮足立っている子供達とそれらを子供達に分け与えるAを眺める。子供達が嬉しそうでAも嬉しそうだ。その光景に微笑ましさを覚えながらAの手にあった米を自身の腕に収めた。「ありがとう」と笑む姿にきゅうと胸が鳴り、愛しさでどうにかなりそうになる。
私はAが笑ってる姿が好きだ。嬉しそうにするのも楽しそうにするのも全部大好きだ。私がその感情の仕草の引き金なら、なお幸せだ。
だから心配になっても人のためだと動き、嬉しそうにする姿を愛おしく思うのだ。そんなところも彼女の魅力の1つで私が惹かれたところなのだから。
「松陽?」
私が黙って見つめていたからか、不思議そうに首を傾げるAに心臓を掴まれつつもそれを表に出さないようににこりと笑う。片思いが長かったからかそういうことが上手くなってしまった。
「あとでいただきましょうね」
子供達と一緒に喜ぶ姿を見て幸せを噛みしめる。
「お前ならヒモ生活できるんじゃね?」
「Aは先生以外と一緒にならねぇだろ」
「才能はありそうだが現実的ではないな」
「人をダメ人間にしたいのかお前ら」
確かに上手く懐に入り込めそうではあるが、Aが他の男といる姿を想像してしまって一瞬で想像をやめた。普通に嫉妬で狂うことができる。
不名誉な才能に不満そうにしているAの頭を撫でて意識を向かせる。私が目に入ることに、先程の勝手な嫉妬は消えていくようだった。
「私は君を養う準備はできていますからね」
「お前もか!僕はちゃんと仕事をする!ヒモににはならない!僕が松陽を養うくらい仕事してやるからな…!」
Aの言葉が頭に入って理解した時、私とこの先の未来を生きてくれる気でいてくれているとだとたまらなく嬉しくなる。もういつものように表情管理ができないくらいに。
「そうですか…そうか…ふふふ」
急に笑いだした私に不審がるAと子供達。
「何…こわ…」
「体調悪いのか?」
口に手を当て笑う私を覗き込むAの頬に手を当てた。驚く愛しい愛しい私の未来の伴侶の頬を撫でて告げる。
「愛していますよ」
1拍置いて顔を真っ赤に染めた可愛らしい人ににまた愛しさが溢れたのは言うまでもないだろう。

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作者名:月光 | 作成日時:2018年8月4日 0時

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