65話 ページ30
「…と、まぁ子供らしい遊びが等身大でできて楽しかったぞ」
「ふふ、そうですか。Aが楽しそうでなによりです」
にこりと笑う松陽は僕の頭を撫でながら言う。
湯浴みのあとの風は心地よく、虫の音は季節の移り変わりを感じさせた。
縁側に座り、松陽は僕を膝の上に乗せずっと頭を撫で続ける。僕はそれを受けるがままであった。子供扱いされている(背格好は子供であるのだが)ことに少々不満を覚えつつも、なんだか擽ったく思えど少しだけこの状況に嬉しさを感じる僕がいた。僕を甘やかすのはいつも通りなのだが、すっぽりと松陽の腕に仕舞われる心地よさ、これは警戒しなくても「守ってもらえる」と安心できた。これは小さくなってしまった今だからこそ堪能できるものなのだろう。
僕は伸ばした足をばたばたと動かした。
「ご機嫌ですね」
「奇怪ではあるが悪くない」
「でも戻ってもらわないと困りますよ」
「それは勿論。松陽が遠くて僕も少々寂しさがあるからな」
「…ほら。そんな可愛らしいことを言って。こんな時に愛情表現するのが憚れるんですよ」
僕が小さいと松陽は困るらしい。まともな大人は子供に、僕に向けて普段することをしないのだと言う。
「近いのに遠い感じがしてもどかしいですね」
やきもきする松陽は僕を膝から下ろし頭を撫でた。撫でるという行為が大人としての精一杯なのだろう。
「じゃあ今日は銀時達と寝たほ『それは許しません』何なんだお前」
僕なりの気遣いは虫の音に飲み込まれる前に松陽によって打ち消されてしまった。
「それとこれとは違うでしょう?ほら同年代の思春期の男女が同室で寝るなんて…ほぼ同衾じゃないですか。だめです、それはだめ。何かあったらどうするんですか?私の気が狂いますよ」
「普段同年代の男女が同じ部屋で寝ていることは無視する方向か?部屋どころか同じ布団で寝ることなんてしょっちゅうだぞ」
「良識ある大人同士、しかも恋人ですから。それはそれは私の屈強な理性が働いているのですよ」
得意げにする松陽に僕は首を傾げつつもそれを一応褒めてやる。どうやら松陽は男女の子供が同じ部屋で寝ることは反対らしい。だが大人はいいとのこと。ふむ、わからん。
「一緒に寝るのか?」
「…………いつもより距離開けましょうね。寝惚けていつもみたいにキスしたら大人としての私が死にますから」
少々悩んだあと松陽は渋々というか苦虫を噛み潰したように言った。松陽の中で2つのものがせめぎ合っているのだろう。難儀である。
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作者名:月光 | 作成日時:2018年8月4日 0時