51話 ページ16
振り向くと楽しそうな顔をした松陽、身の危険を知らせるには十分だった。
「へぇ、猫って尻尾敏感なんですね」
つーっと軽く触れるように先から付け根へと手を滑らせる。ゾワゾワとした感覚は強くなって体から力が抜けた。
「それだめだ、なんか変だから…!」
僕の静止を聞かずに撫で続ける松陽に睨みをきかすが効果はないようで、僕は最終手段だと息を吸った。
「銀時!」
ぼーっとした様子でこちらを傍観していた3人はハッと意識を戻し、僕を松陽から引き剥がした。正面の3人に抱きついて尻尾を逆立てた。
「…先生」
「松陽先生…」
「松陽…そりゃねぇぜ…」
僕を憐れむように見て背中を擦ってくれる。心優しい子に育ってくれて僕は嬉しいよ。しかし松陽は別の視線を向けていたようで、少し引き気味な声が聞こえた。
「そんな目で見ないでください!つい魔が差したんです!Aごめんなさい!」
「……松陽怖かった」
「ごめんなさい!」
3人に手を引かれ机の前に座らせられ茶を用意される。とんでもなく哀れに見えたらしい。1人置いて行かれた松陽はその後後ろを着いてきて、今は僕の周りをうろちょろと動き回っている。
「あの…A?機嫌直していただきたいんですけど…そろそろ触れないと私死んじゃいます…」
「知るか。勝手に死んでろ」
ふいっと松陽の反対を向く。僕は怒っているんだ、今回は簡単に許してなるものか。
「そんなぁ…」
寂しそうな声に少し心が痛むがそれを見て見ぬふりして子供達に笑いかける。
「そうだ。銀時、晋助、小太郎、一緒に茶菓子でも食おう」
「私は…?」
「知らん」
もう1度ふいっと反対を向けば限界なのか、僕の袖を少し掴んで哀願してきた。直接触れないのは僕への配慮だろう。そんなにも気が回るのに何故あぁなるのだろうか。
「本当にごめんなさい、Aが可愛くてついいじめたくなっちゃうんですよ。ね?わかって、だからね、お願いだから許してください、私、君に嫌われたら生きていけない、好きですよ、もうしませんから…だから…」
「…もうしない?」
「はい絶対に。でも頭撫でるくらいは…?」
「…それなら許す」
「ありがとうございます!そうだ、ご近所さんからいただいたどら焼きがありました。今取ってきますね!」
打って変わって元気になった松陽は機嫌良く台所の方へ向かって行く。僕はその後ろ姿に少し微笑って茶を飲んだ。
「「(俺達は何を見せられているんだろう)」」
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作者名:月光 | 作成日時:2018年8月4日 0時