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49話 ページ14

皆を宥めてAは前に立つ。不祥事を起こした俳優の記者会見のような雰囲気が教室を占めていた。理由は明らかだろう。皆、Aにガチ恋とまではいかずとも推しのようなアイドルのような好意を向けていたからだ。1部、ガチ恋はいたようだが。
Aはこの状況に首を傾げつつも、関係について口を開いた。
「確かに僕は松陽と恋人関係になった。だが僕はまだ恋情を知らなくてな、僕の中にあるものが何かわからない。松陽がそれを教えてくれると言った。だから僕はそれを受け入れることにしたんだ。…待てよ、この関係は恋人と言うのか?」
「恋人以外の何ものでもないでしょう?私のこと嫌い?好き?」
「嫌いじゃない、好きだ」
「なら両想いですね、ほら、恋人同士」
「うん…?そうか」
Aは上手く丸め込めれた気がしなくともなかったが、繋がれた手の安心感にそんな考えは飛んでいった。
「この安心感は恋?」なんてすべてを疑ってかかるほど、Aは恋の修得に必死であった。彼女は誠実である。宙ぶらりんのような関係に申し訳無さがあったのだろう。必死に恋心を理解しようとするAの姿勢を松陽は愛おしく見ていた。
「A先生は好きな人いなかったの?」
記者の質問が入る。
「1番とかはなく皆好きになろうとしていたからな。だから親愛と恋愛の違いがわからないんだ」
その答えに全員が困ったように頭を捻る。本人がわからないのなら他人がどうすることもできないのだ。自覚することを待つしかない、そう松陽が思った時、Aは言葉を続けた。
「でも…どう頑張って平等に好きになっても、松陽が1番なのかもしれないな。僕を救ってくれたから。松陽が隣りにいると安心するんだ」
この言葉を聞いてこの場にいるA以外の思考は一致した。「あぁこれ両片想いだ」と。Aの隣の松陽は嬉しそうに口を手で覆い震えている。Aは少し恥ずかしそうに笑っていた。完全にそう(・・)である。
「不甲斐ないが知識のある者は見守ってくれると助かる」
Aはそう言って困ったように照れたように微笑う。それを見た子供達は「「『イヤ』なんて言えないじゃん…」」だと心が一緒であった。
この日から推しがAだった者は、松陽×Aのカップリングを推すことになる。なお少数派だがA×松陽の派閥も存在し、論争が起きるのは言うまでもないだろう。どの時代のオタクもやることは変わらない。

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作者名:月光 | 作成日時:2018年8月4日 0時

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