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47話 ページ12

そんな松陽に先程の言葉が脳裏を掠める。「恋煩い」それは不思議なものだ。幸せで、なんだかふわふわして陽だまりのようで、それでも少し苦しい。
なんだか上手く喋れず、僕は揺れる月を呑みほした。
「ねぇA?」
いつもと違う声色で呼ばれる。心臓が煩く鳴って口から飛び出そうだ。
「な、なに…?」
「好き、ですよ」
猪口を持って優しい声で言った。
「好き。愛しています。何よりも。君を1人の女性として愛しているんです。私以外の男に渡したくないんです。あの時からずっと好きでした。私とお付き合いしてくださいませんか」
心臓がこれ以上ないほど鳴っている。体温がこれ以上ないほど上がっている。気づいたら繋がれた手から熱が伝わってくる。今の状況がわからなくて、僕が僕ではないみたいだ。
僕は若干混乱している頭で言葉を紡ぐ。
「僕は…まだ恋心というものがわからない。物語で綴られているような客観的な第三者視点からしかわからないんだ」
そう言えば松陽は困ったように微笑う。
「私のこと嫌い?」
「好き!嫌いなわけがない!僕はずっと松陽が好きだ、でもこれが銀時達と別の好きなのかまだわからない。初めての感情ばかりで何もわからないんだ」
こんな状態は真剣に僕に恋心を寄せている松陽と対等だと言うのか。理解できていないのなら僕はまだ松陽と同じ土台に立ってはいけないのだ。「好きだけど違う好きなんだ」そんな結果許されないから。
それなら僕はどうするべきなのか。好きのあとはどうすればいいのか。好き同士ならどうするのか。何も知らない僕はここから動けない。
「私と付き合ってください」
「だから僕は…!」
続きの言葉を紡ごうとした時、僕よりも大きな体に抱きしめられた。久しぶりの暖かさにこんな状況でも安心してしまう。強く、それでも優しく抱きしめられる。激しい心臓の音が僕にも伝わってきた。
「わかってますよ。君はとても誠実で優しい人ですから。だから私が教えてあげます。未完成な恋心、私と同じことを教えてあげます。少しずつでいいんです。少しずつ私のことを異性として、恋人として見てください。少しずつ慣れていきましょう?」
「もう1度言います、私とお付き合いしてください」
胸がきゅっとする。何も知らない僕でもいいと言った。少しずつ知っていけばいいと、教えてくれると言った。僕の中の誰も知らない感覚が熱を持つ。
僕は背中に手を回し肩に顔を埋めたまま小さく呟いた。
「よろしくお願い、します…」

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作者名:月光 | 作成日時:2018年8月4日 0時

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