47 幸せ ページ48
戸惑いと混乱が混じっていても、秒針の針はカチカチと動いていく。……なんて、言葉を返したら良いのか分からないまま居ると、再び流れ出した重たい沈黙。
「……Aが目を覚まさない間、ずっと私たちに毎日会いに来てくれたのよ。」
春くんは、私が病室のベッドの上に居た数日、ずっと両親に会いに行き、毎日頭を下げ続けたらしい。
『俺の事は憎んでいても構いません。だから、Aと産まれた子供の事は……』って。私は、なんて幸せな女なのだろう。こんなに、愛している人に愛されて。
「A、幸せになりなさい。貴女の人生は貴女のものなのにね。今まで私たちの価値観を押し付けてごめんなさい。」
涙ぐむお母さんと背を向けるお父さん。微かに父親の肩は震えている。もしかして、泣いているの?そんな問いかけはせずに、見つめる。
「ありがとう。……私、幸せになるよ。」
我が子を抱いた腕にじんわりと生温かさを感じる。それは、これから長い人生を育んでいこうとしている新しい生命。
私の、可愛い子供。
まだはっきりとした顔立ちでは無いけれど、睫毛が長くてどこか色素が薄い。春くんに、似てる。
「これからの事はちゃんと2人で話し合いなさい。本当に困った時は、私達も助けるから。」
お母さんは、包み込むような優しい微笑みを私に向けた。冷徹な人だと思っていたけれど、そうじゃなかったんだ。お母さんは、お母さんなりに、私を必死に育ててくれていたんだ。
それを、今になってやっと気づくなんて、やっぱり私はバカなのかもしれない。
「後は頼んだわね、春千夜くん。」
病室から出ていくお母さんたちの背中を数秒見守り、春くんへと視線を向ける。珍しく瞳が潤んでおり、口元を緩めると軽く叩かれた。
「ニヤニヤしてんじゃねえよ。……Aが、目ぇ覚まさなかったらって考えたらずっと怖かったんだからな。」
私を抱きしめる春くん。今までとは違い、我が子も包み込むように優しく抱きしめてくれる。
「ごめんね、春くん。お母さん達の事もありがとう。……やっぱり私、春くんを好きになって良かった。」
「俺もAを好きになって良かった。……愛してる。」
触れるくらいの口付けを交わして、微笑み合う。それが、どれ程幸せなのか、昔の私だったらきっと知らなかった。春くんに……三途春千夜に出会う前の私だったら。
この幸せが、ずっと続きますように。3人でずっと笑い合えますように。そう、願った。
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さきな(プロフ) - 漆Pさん» 長らくお待たせさせてしまい申し訳ありませんでした!(土下座)こちらの小説でもコメント頂けて嬉しいです✨あと少しで完結なので頑張ります♡ありがとうございます! (2022年9月24日 15時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
漆P(プロフ) - 更新再開おめでとうございます(*´ω`*)ずっと待ってたかいがありました!無理せずに更新頑張ってください!応援してます! (2022年9月24日 13時) (レス) @page47 id: 436ede0cdd (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - モックさん» コメントありがとうございます✨続き更新致しました!ぜひ読んで下さい!完結までもう少しのところまで来ておりますので、頑張ります!ありがとうございます! (2022年9月24日 11時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
モック - めちゃくちゃいいところでとまってる〜!! 続きちょ〜楽しみ☆ 春くんがイケメンすぎてにやにやがとまりませんwww 更新頑張ってください!応援してます♪ (2022年9月24日 10時) (レス) @page46 id: 17f5259717 (このIDを非表示/違反報告)
さきな(プロフ) - ちょんちょんさん» コメントありがとうございます✨更新していきますので、最後まで読んでくださったら幸いです! (2022年9月24日 0時) (レス) id: 1d6ef99bbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきな。 | 作成日時:2022年2月20日 0時