帰宅したら家に反社がおりまして。【三途春千夜】

35 望まれない ページ36

帰らないつもりだったけど、会社に行く服が毎日同じなのは流石にどうかと思い、春くんが家に居なさそうな時間を見計らってマンションへと向かった。

合鍵は持ったまま出てきてしまった為、不幸中の幸いと言ったところかもしれない。

認めたくは無いけれど、本当に私たちはこれから先……もう何も無いのだと思うと心に穴が空いたような気持ちになる。

案の定室内に彼の姿は無い。けれど、此処に来る事に対して気が引けているせいか、そろそろと足音を立てないように部屋の中を移動する。

欲しい物だけキャリーバッグに一旦詰め込んで纏める事にした。今日はビジネスホテルに泊まるか……それとも一旦実家に腹を括って帰るべきか。

良い案が無くて八方塞がり状態である。

纏めた荷物を持って、とりあえずこのマンションを後にする。偶然鉢合わせてしまったら、きっとまた喧嘩になってしまうに違いない。

本当はもっと冷静に話せたら良いのだけれど……今はきっと互いに譲りたくない思いや気持ちがある。それが少し落ち着くまでは離れた方がいい。

そう、言いたかったんだけど。……私の言い方1つで春くんが冷たく突き放すような言葉を私に向けて刺してきた。時に、言葉は刃だ。

まだ、あの時のことを思い出すとジワジワと胸が痛んでくる。

被害者ヅラしたって、私にも非があるのだから春くんばかりが悪い訳じゃない。

……子どもの事、ちゃんと話し合いたかったな。私は産みたい。でも、現実的に考えてやっぱり私1人で育てていくのは難しい。

産まれてから6ヶ月くらい経ったら保育園に預ければ働くことは出来る。でも、まずその為には保育園に通える条件を満たせているかどうかの問題も出てくる。

保育園は誰でも入れる訳じゃなくて、働く時間や職によって優先順位もかなり変わってくる。私は復帰したら出来るだけガッツリ働いて生活が困る事が無いようにしたい。

お金が無ければ何も出来ないし、子育てをしていくのも難しくなってくる。

考えれば考える程、新たな問題が発生する。春くんが居たら、心強いのに。

……でも、春くんは私との子どもをきっと望んでいない。望んでくれていたら、きっと喜んでくれていたはずだ。

ダメだ、余計な事を考えてしまって泣きそうになっている。

実家にも、妊娠した事を告げたとしても喜んでは貰えない。こんな望まれないのに産まれてくる子は幸せになれるの？

もう、私には分からないよ。

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