帰宅したら家に反社がおりまして。【三途春千夜】

34 混乱 ページ35

春千夜side
Aが妊娠した。本当に俺の子か、と驚いてしまった時に、Aは俺以外に誰がいるのか、と問いた。

灰谷の子どもな訳無いのは分かってはいても、ついAに思ってもいない事を言ってしまった。

そしたら……そう思うならそれでいい、なんて言いやがって。腹立って、帰ってくんなって言ってしまった。引っ込みがつかなくなって、Aが家を出ていってしまったのを止める事が出来ないまま、朝を迎えた。

昨晩のうちに帰ってくるとどこかで過信していたけれど、Aは帰ってこなかった。

俺があんな事言った手前、連絡するのも躊躇ってしまって、Aとのトーク欄を開いたまま、指先を動かせずにいる。

「部下がやりづらそうにしてんぞ〜、あんまりイライラしてんじゃねえよ。」

俺の背後から、聞き慣れた声。振り返ると腹が余計に立ちそうだから振り返る事もないまま、言葉を投げる。

「知らねえよ。……お前のせいでイライラしてんだわ。」

「は、俺？」

無自覚なのが更に苛立ちを掻き立てていく。振り返って1発頬を殴れば、相手も不機嫌になる。

「いきなり殴るんじゃねえよ。」

「お前がAに手出そうとするから、クソ面倒な事になってんだよ。分かってんのか？」

それを言えば、少しだけ気まずそうにする。……それに関しては自覚しかないらしい。

「……悪かった。もう手出さねえし、出せねえよ。」

コイツも、とっくに気づいてるらしい。Aが妊娠してるという事に。

流石に妊娠してる女には手出し出来ない、なんて言いやがったけど、誰かの女だっていう時点で手出すんじゃねえよカス。

「お前、Aの事、本気で好きだった訳？」

その先の答えがYESでもNoでも許す気ねえし、こうなった以上もう引き返せねえけど。

何も言い返してこないのは、きっとそういう事なのだろう。まあ、どちらにせよ、もう手出しするつもりは無さそうだからどうだっていいけど。

互いに離れた方がいい、なんて言われて意地張ってAが素直に帰ってくる訳が無い。

そう、分かってはいるけれど。今の俺がAを引き止める筋合いは無い。

Aは、腹の中にいる子どもをどうしたいのだろう。昨日、もっと冷静な状態で、その話をすれば良かった。

どちらにせよ、今の状態じゃ互いに混乱していて冷静に話せる確率の方が低そうではあるから、ある意味Aの言われた通り離れた方がいいのかもしれねえけど。

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