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「……確かにわらわはお主の真名を知らぬ。じゃが、大鵬殿はわらわの真名を存じておろう?」
「それは、朱(あけ)が、我を信じるからこそ、差し出してくれたのだと思っているのだが……」
「ま、そうじゃのう」
少々、癪ではあるが……そう呟いて、そっぽをむいた朱姫様の背に、まぁまぁ、と大鵬が声をかけた。
「この屋敷にいるものは、すべて、我に真名を預けておるからな!」
お前だけではないぞ! と白い歯を見せて笑っていた。
「……わらわが言いたいのはそう言うことではない!!」
何故かむきになった表情で振り返った朱姫様は、今までよりも子どものような雰囲気がした。
「では、何が言いたいのだ?」
「わらわが大鵬殿に真名を預けたのは、大鵬殿に全てを捧げる覚悟があるから故であるぞ!」
「はっはっは!! もちろん。もちろん知っているぞ、朱(あけ)!」
「むぅ……」
罰が悪そうな朱姫様を可愛らしいと思ってしまった。
神様を可愛らしいと思うだなんて、失礼かもしれない。
でも。
その時の私は、迎えに来た時は大人に見えた朱姫様が、大鵬の前では少女みたいなふるまいを見せるのが、意外で……少し楽しくなった。
「……っぷ。うふふふふ」
思わず笑ってしまって。
それから慌てて袖で口元を塞いだ。
「おお! 花嫁殿が笑ったぞ!!」
大鵬が妙に嬉しそうな顔をして。
腕の中の私を高く掲げた。
「っひゃ! ご、ごめんなさい!」
私はあわてて謝ったけど。
「よいよい! 子どもであれ、女子(おなご)であれ、我は人の笑顔が好きだからな!」
もっと笑え! 豪快にふんぞり返って言われた。
朱姫様は溜息をついて、そんな大鵬をいさめてくださった。
「……大鵬殿。いい加減にせぬと、花嫁殿が引いてしまうであろう?」
「おお、悪い悪い!!」
そう言って大鵬が腕を降ろして……。
(ゆ、床には降ろしてくださらないのですか!?)
元の場所。
力持ちの腕の中に、私の体は収まった。
「さて……。我は決めたぞ!」
人喰いの神様とは思えない。
凄く無邪気な、きらきらした目をしていた。
「お前は笑った顔が良く似合う! 春の日差しのように温かな雰囲気になるお前にはAという名がぴったりだ!」
……お前自身はどう思う? そう問われた。
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一花(プロフ) - Nonさん» (続)しかし、物語にのめり込める……そう仰っていただけ嬉しいです。ありがとうございます。国語力は……常に平均レベルでした(汗) 夢想力は多少あるかもしれません(笑) Nonさんこそ、とても誉め上手です。沢山、嬉しい言葉をくださり、ありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - Nonさん» ありがとうございます。後編もなるべく楽しんでいただけるよう、精進いたしますね。少し間が空きますが、公開時は宜しくお願い申し上げます! それから、文章……お褒め頂き有ありがとうございます。力があるかは私自身は判断を読者様に委ねるしかできません(続く) (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - 光珂.さん» ありがとうございます! ボード、確認いたしました。本当にありがとうございます! レスさせていただきましたので、またご覧下さると幸いです。本当にありがとうございます! (2014年8月30日 23時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
Non - どうも、またNonです。後編すごく楽しみにしてます!一花様はほんと文章力が凄くあると思います。国語とかは得意なほうでしょうか?凄く物語にのめり込めるので大好きです!あと、誉めるのもとても上手いですよね! (2014年8月26日 6時) (レス) id: 240a63bd27 (このIDを非表示/違反報告)
光珂.(プロフ) - こんにちは。 前編完結、おめでとうございます! 誤字脱字のチェックをしたのですが、諸事情でボードの方に書かせて頂きました。 お時間のある時に確認お願い致します。 (2014年8月25日 16時) (レス) id: 21af548d66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一花 | 作成日時:2014年7月22日 22時