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中1の春、いつものように誰もいない早朝にシャワーを浴びようと1階に降りた。
4時くらいだったと思う。
風呂場に続くドアを開けようとしたとき、リビングの方から声が聞こえてドキリと強ばった。
あ、やばい、後にしようかな
と踵を返そうとしたとき、聞こえてきた単語に固まった。
「……〜!…だからAはいい加減施設に入れましょうよ!!」
え、私のこと話してるのかな。
思わずリビングに続くドアにピタリと耳をつけた。
「…そうだな…。そういえば、あそこの施設長はなんだって?」
「1〜2ヶ月待てば空きがあるそうよ。あそこなら口も固いし。…はぁ、やっとね。」
「…あぁ。探すのに大分手間取ったな。」
「ほんとよ!!あんた何にもしてくれないんだから。」
「悪かったよ…。俺はみどり達の方で忙しくてな。」
みどりというのはいとこの1人で、この家の長女のことだ。
「まあ、そうね…。じゃあ、あと1〜2ヶ月の辛抱ってとこね。」
「あぁ…本当はすぐにでもと思っていたが、母達の手前暫くは預かるしか無かったんだ。お前はよくやってるよ。」
「ほんとに思ってんのかしら。…まぁ、自ら死んだりなんてされちゃ洒落になんないもの。仕方ないわ。」
「…はぁ…いい加減寝よう。今日もみどり達の稽古があるんだから。」
「そうね。」
そう言ってガタリと椅子を動かした音がした。
や、やばいこっちに
小走りで風呂場にしゃがみこんで隠れて、何とか見つからなかった。
2人は2階に上がったようだ。
ポタ、と薄い半袖に染みができた。
「……ぅっ、…。」
嗚咽を漏らすまいと必死になると、目からより涙が漏れてしまうことは随分前に学んだ。
あぁ、分かってたじゃないか。
初めからそうだっただろう。
たまに見せる叔母の優しい表情は、私を揺さぶっていたみたいだ。
「…ふ…。」
いい加減涙を止めたくて、無理やり笑ってみた。
頬が引きつる。
結局シャワーも浴びずに、その場に10分くらいいた気がする。
この日、私はこの家に来てから初めて自分の意思で外に出た。
普段誰も使わない裏口から、とぼとぼと歩き出す。
なんだかもうどこかに消えたかった。
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作者名:すうぎ | 作成日時:2020年3月27日 3時