先に行くあなたへ【黒尾鉄朗】 (ページ32)

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【32】※過去ページ32

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当時の私は小学六年生で、あまりにも子供だったと思う。

父と母を亡くし、憔悴しきっていた私を引き取ることになったのは宮城に住む叔父の家庭だった。

私を引き取る家族が決まるまで、１～２ヶ月。

親戚一同の話し合いでは怒号が飛び交い、冷たい視線が私を刺した。

"勘弁してよ！！！"

"うちももう手一杯なんだよ！！それなのに、あの人の子を預かるなんて…"

"ただでさえあの子は…"

決して要らないとは口にしなかったけど、目は雄弁に物を語る。

誰も私を必要としてくれない。

それがいつも話し合いの答えだった。

結局金銭援助を受けるという形で叔父の家が引き取ることになった。

その時の叔父の諦めたような目が忘れられない。

私は叔父にも、叔母にも、いとこ達にも、心を許せなかった。

どこか意地になっていた部分もあった。

あの時少しでもにこりとしていれば何か変わったかもしれない。

叔父は公立の学校に転校の手続きをしてくれていたようだが

小学校にも、中学校が始まっても、私は行かなかった。

毎日を、3階の1番奥、物置だった埃っぽい部屋で過ごしていた。

いとこ達とも、叔父とも叔母とも顔を合わせることは少なかった。

いとこ達はたまにこちらにやって来ては、早く死ぬか出てってよ、なんて言われた。

いとこ達は大学附属の私立学校に初等部から通っていたらしく、

家庭教師が頻繁に来て、リビングで勉強を教えていた。

叔父の諦めたような物言い。

私の部屋に投げられる叔母の棘のような罵倒。

乱雑に用意された、話したことも無いいとこ達のお下がりの服。

全てが暗い世界で、私は毎日窓から外を見ていた。

3階から見た冬の雪は今でも忘れられない。

ドアの前に用意された食事は段々と量が減り、いつの頃からか朝食は無くなっていた。

「…っ…、うっ…。うぅ…。」

夕食として用意されていたパンとジュースをもさもさと口に入れながら、涙がボタボタ零れた。

こんな生き方、父も母も望んでいない。

そんなことはわかっていた。

でも、しょうがないじゃないか。

だってこの他にどうすればいいの。