先に行くあなたへ【黒尾鉄朗】 (ページ29)

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あ！あれは！

先程の水道で1人水を飲んでいたのは、4番のユニフォームを着た

青葉城西のエースの人だった。

えーっと、確か岩泉、さん…

多分あの人なら徹君の居場所を知っているだろう。

よし！と意気込んで声をかけた

「あのー、すみません。

少しいいですか？」

「ん？」

キュッと閉めた蛇口と同じタイミングで、彼は私の方を見た。

あ、ちょっと怖そう

なんて、失礼な事を考えてしまうくらい彼の目は鋭く真っ直ぐだった。

「えーっと、及川徹…さん…の居場所ってご存知ですか？」

「あ？……お前、もしかしてクソ川の追っかけか？」

クソ川？

いや、それよりも私は追っかけ…ではない？よね？

「い、いや、そういう訳ではないんですけど！

あの、ちょっと話したい事がありまして…！」

「うちの生徒だろ？

最近よくいるよな、友達と2階からみてて、わざわざ及川に差し入れとかしてる…」

へ？？？

いや、ちょ

誰かと勘違いしてる？？

「わりーんだけど、試合中なんだわ今。
さすがに終わってからにしてもらっていいか。」

鋭い目が私を射抜いた。

「ちょ、違くて！私はただっ」

「話すだけにしても、今じゃなくていいだろ。

集中切らしたくねーし。仮にも主将なんだよあいつ、知ってんだろ？

だからこういうの今は辞めてもらっていいかな。」

「違うっ！追っかけじゃなくて、私は…」

「じゃあなんだよ？

………はぁーー、いや応援は嬉しいけど

正直今は迷惑なんだよ。練習の邪魔はしないでくれ。」

冷たく言い捨てられて、なんだかすごく悔しい。

この人は私の先に違う人を見ているけど、そんなの私には分からず

言葉は私に直接届くのだ。

え、私のしようとしてることってやっぱり迷惑なのかな。

それよりも、音駒のマネージャーって伝えないと。

暑いからってジャージ脱がなきゃ良かった。

これじゃ音駒マネージャーか分からない。

冷たい視線に見下ろされる。

あ、やばい

目頭が熱くなっているのが分かる。

今泣いたら余計に…

「私はっ、音駒のマネージャーでっ」

ぽろぽろと涙がこぼれ落ちたとき

ふと違う影が近くに止まった。

「ちょっと岩ちゃんストップストップ！

そんな言い方可哀想…だよ…」

バッチリ視線がぶつかる。

驚いた顔、昔と一緒。