先に行くあなたへ【黒尾鉄朗】 (ページ23)

今日:15 hit、昨日:11 hit、合計:2,182 hit

【22】ページ23

・
・

ガチャン。

自動販売機でお茶を1本買って、一息つく。

うーん、水の方がよかったかな？寝る前だし…

なんて考え事をしてたら

トン、と肩を叩かれた

「ぇうわっ！」

「あ、わり…驚かせた？」

そう言って顔を覗き込んできたのは

髪が濡れてペタッとした黒尾だった。

わ…私ちゃんと髪乾かして来ればよかったな。

「黒尾か…びっくりした～暗いし。

どしたの？」

「いや俺も喉乾いちゃってサ。

それより、よく俺ってわかったね？皆にやいやい言われたのに。」

って言うのは、いつものトサカヘッドじゃないからだろう。

「ふふ、わかりますよー。3年目だもん。

1年の時は分からなかったけど…くしゅんっ」

濡れた髪に半袖短パンはいくら5月でも夜は寒かったみたいで。

「あ、ごめ…」

黒尾の目の前で思いっきりくしゃみしちゃって謝ろうとしたとき、バサッとパーカーがかけられた。

それは今黒尾が着てたもので。

私が着るとワンピースみたいになって。

「ほら、風邪引くんじゃないよー。

それ返すのは明日でいいから。」

「わ、ありがとう。」

「髪の毛もちゃんと乾かしてから来なさいよ～。

男所帯なのに危機感ないなー。」

なんて言う黒尾は私には興味が無さそうで。

どれにしようか、なんて自販機とにらめっこしている。

私は、濡れた髪の黒尾がすごくかっこよくて困ってるのに。

「別に、大丈夫だよ。

…皆はそんなんじゃないし。そんな気もないって。

はは、黒尾心配しすぎだよ。

私に限ってそんなこと…」

"そんなことないって"

そう言いかけた言葉は

強く握られた手首にびっくりして出てこなかった。

「え、ちょ、黒尾なにしてっ」

自販機に押し付けられるようにして握られた手はびくりともしない。

「ほら、逃げらんないだろ？」

思わず顔を逸らす。

ポタ…と黒尾の髪から水滴が落ちてくる。

「いつ何があるかわかんないんだぞ。

昨日だってそうだったし。

お前は女で俺らは男なの！だから気をつけて…」

ポタポタと今度は私の目から水滴が落ちた。