先に行くあなたへ【黒尾鉄朗】 (ページ15)

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「失礼しまーす！ご飯作り手伝いのマネージャーで…」

「マネの子ね！まだ夜ご飯作るまで30分くらいあるから、先お風呂入っといで。」

宿に戻って、夜ご飯を作ろうと食堂に入ったがまだ早かったみたいだ。

宿の方に先に風呂を、と言われてしまった。

「あ、じゃあ先にお風呂頂きます。30分後くらいにまた食堂来ますね。」

「はーい。」

んー、なかなか立派な宿だなあ。

男子は2部屋で共同部屋、私は1人で部屋を使わせてもらう。

こういう時、いつも他にもマネが入ればなあと思う。

1人で使うには少し広くて、いたたまれないのだ。

少し歩いて、風呂場についた。

「ふふーん、ふーん」

風呂場に私の鼻歌が響いた。

今日の黒尾、なんかかっこよかったな。

私の心配、してくれたのかな。

思わず頬が赤くなる。

黒尾の優しい所は凄く好きだ。

だけど、

黒尾の優しすぎるところは少し苦手だ。

たまに勘違いしそうになる。

「はぁーーー。」

肩までお湯に浸かって、思わずため息が出た。

部活終わるまではこの関係でいたいって

決めたのは私なのにな。

男子運動部のマネージャーをやってると、やはり女子の友達には色々と詰め寄られることが多い。

『黒尾君と付き合ってるの？！』

『部内に誰か好きな人いないの？』

『彼氏作る目当てで部活入ったとか？』

なんて、これまで何度聞かれたことか。

最初はこれといった目的もなく入部したのは事実だし、

何かバレー部で成し遂げたい目標があった訳ではなかった。

ただ誘われて、自分を変えたくて新しい事をしたいだけだった。

だけど、今は違う。

ほんとに皆と一緒に全国制覇して、そんな皆を1番近くで支えたいって思ってるんだ。

だから、今は言うべきじゃない。

実際黒尾が好きで、不純な動機でやってると言われても何も言えない。

私は何言われても平気だけど、

頑張ってる皆まで一緒にされたくない。

「……よし！夕飯作り！」

立ち上がって脱衣所に向かった。