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短編小説 /彼女に抱くこの感情は?/ ページ10

――――『爪先にキス




「いい雰囲気ですね、先輩」
「うん!私の描きたかった景色にピッタリ」

彼女はそう言い、嬉しそうに笑うと、さっそく窓際にイーゼルを立てはじめる。
ここは、山奥にある小さな別荘。美術部である彼たちは、次のコンクールに向けて絵を描くため、泊りがけでここへと来たのだ。

辺り一面、木しかないような本当の山奥。
けれど、光が無い分夜は星が一段と綺麗だし、窓から見える景色はところどころ紅葉しはじめた木々で埋め尽くされており、赤、黄、橙、様々な色が飛び交っていて、良い絵を描けそうな予感がする。
風の音しか聞こえないくらい静かで、絵を描くにはもってこいの場所だ。

彼も絵を描こうと彼女の横にイーゼルを立てる。
まずは目の前の光葉の景色でも描こうかと、木炭を握った。

さらさらと、キャンバスに木炭が擦れる音だけが木霊する。
一通り下書きはし終わったが、何かが足りないと彼は首を傾げた。

彼は無意識に舞い落ちる葉っぱの空間の中に、彼女の存在を描いていた。
少し微笑みながら、楽しそうに絵を描く彼女。
そんな彼女に興味を持ち、憧れ、そして惹かれ、美術部へと入部したのだ。

絵の中の彼女は白いワンピ―スに身を包み、こちらを振り返って、微笑んでいる。
人が一人いるだけで、絵の雰囲気は変わるものだ。さっきよりなんだか、温かい絵になった。

「ん〜ッ」

彼女も下書きを終えた様だ。ぐぐっと伸びをすると、彼女はこちらを見て、「少し休憩しようか」と問いかける。
「あれ?」
彼が描いた絵が彼女の目に止まる。
「ねえ、それ、もしかして私?」
「え、ええ…すみません、勝手に……」

申し訳なさそうに謝る彼に、ううん、と彼女は首を振る。
「実は私も、描いてたの」
舞い落ちる葉っぱの空間に、彼の存在。
その二枚の絵は、まるでもともと対だったかの様に見事にシンクロしていた。

「……先輩、」
「なぁに?」
「僕が、何故美術部を選んだか分かります?」
「…絵が、好きだったから?」
「勿論それもあるけど、それだけじゃないんです」

彼は立ち上がると、彼女の前に跪き、徐にその白い素足を手に取った。
そして、そっとその爪先にキスを落とす。

「絵を描いている貴方に、一目惚れしたからなんですよ」

その感情は、愛か、憧れか、
それとも、別の何かなのか―――




――――『忠誠の証・崇拝

短編小説 /貴方の残した/→←短編小説 /君の目を奪うのは/


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設定タグ:キス , 意味 , 零ーレイー   
作品ジャンル:得する話, オリジナル作品
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容姿端麗に生まれ変わり隊(プロフ) - 『頬』と『額』は親しみ感が溢れてていいと思いました(o^−^o) (2019年4月29日 13時) (レス) id: 26de7c6d79 (このIDを非表示/違反報告)
沖蘭 - ちなみに頬へのキスは海外だと挨拶に近いですね。私も海外に住んでいるので親しい人とは頬にキスします。 (2017年2月26日 6時) (レス) id: 63d7861522 (このIDを非表示/違反報告)
沖蘭 - 月が綺麗ですねから来ました!!鼻梁は鼻筋の事ですよ。面白かったです!こんなことをしてくれる彼氏が欲しいです。続編も楽しみにしています!頑張ってくださいね!! (2017年2月26日 6時) (レス) id: 63d7861522 (このIDを非表示/違反報告)
零ーレイー(プロフ) - とりあえず完結しました〜!皆さま本当にお付き合いありがとうございました<(_ _)>近々続編を作るつもりなのでそちらも是非よろしくお願いします! (2017年2月11日 23時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)
零ーレイー(プロフ) - のわあああ、意味が意味なのでヤンデレ続きになって申し訳ないです……全然純愛じゃない…キスの格言に相応しくない…… (2017年1月31日 20時) (レス) id: 79ca697b23 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:零ーレイー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/hina99121/  
作成日時:2016年8月31日 18時

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