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story89 ページ41

フェイタンの前に座れば、彼が鋭い視線で見下ろしてきた。


「それで、なんで名付け親になったのか教えてくれる?」
「…知らないね。ただお前が、ワタシに名前を付けろとうるさかただけよ」
「……私が?」
「まぁ、そのあたりは俺が説明しようか」


言葉足らずのフェイタンに苦笑を浮かべ、クロロが手を挙げた。皆の視線が彼に集中する。


「Aと俺が出会ったのは、すぐそこにあるゴミ山だ。そこでAは追われていたようだった。理由は知らん。何も教えてくれなかったからな。ただそんな状況にもかかわらず『心配してくれてありがとう、運が良ければまたね!』と元気に屈託なく笑いながら去っていく姿が印象的っだった」


その言葉に、フェイタンの顔が少しだけ歪んだ。


(ち…ワタシだけじゃなかたね)


あの笑顔を独占していた時間は、思っていたより短かったようだ。その事実に思わず舌打ちをすれば、すぐ隣にいるマチに不思議そうな顔をされた。


「その後何度か、君の姿を見かけていた。そのたびに君は追われていた。まぁかっぱらいか盗みか…大したことじゃないと俺も思っていたんだが、いつ見ても余裕のあるAに興味を持って、仲間にならないかと誘ってみたんだ。そうしたら大輪のような笑顔でもちろん!と言ってくれた。それで拠点であるここまで連れてきた」
「ふむ…余裕があったかはちょっとわからないけど、確かにAはいつも楽しそうに笑っていたね。それも心からって感じで」
「そうなんだ…」


シャルナークの補足になるほど、とつぶやく。どうやらあの過去の声は間違いないようだ。問題はそれを告げた相手。クロロ、だろうか?ならばこの話を聞いた時点で思い出しても不思議ではないのだが…なんて考えていたら、クロロが話を続ける。


「この拠点に来てから、いきなりフェイタンのことを『命の恩人さん』と言って懐いてね」
「…前も聞いたけど…なんで命の恩人さん?」
「さぁな。ただ名前はせっかくだからフェイタンにつけてほしいと、自分から強請っていたよ」
「……それでうるさくて仕方がないから、しょうがなくワタシが名前をつけてやたね。Aという名前を」


最後に小さく付け加えたフェイタンの声音がどこか不機嫌なもので首をかしげながら、Aは過去の自分に思いをはせる。


(命の恩人さんと限定したという事
(私はフェイタンに助けを求めた…?)
(クロロには助けを求めなかった…?)
(…なんでだろう)

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- とても面白いです!つづき楽しみにまってます!頑張ってください、応援してます! (2020年4月6日 12時) (レス) id: 7d54cdb775 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 由宇さん» コメントありがとうございます!ちょいちょい停止しますが必ず書き上げますので、どうぞよろしくお願いいたします! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ここっちさん» もうちょいで記憶が!まだわかりません!(←)でも長い目で見ていただければと思います、よろしくお願いします! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ゆっずーさん» 遅くなりまして申し訳ありません!いつもありがとうございます!これからも頑張りますね! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
由宇 - 面白いです!早く更新停止が終わることを願ってます!頑張ってください! (2018年8月15日 11時) (レス) id: 06761224f9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:灯霧 | 作成日時:2017年7月10日 18時

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