story87 ページ39
その日はそのままぶらぶらすることにした。お昼を食べ終わりまた外に出て、流星街を歩く。スカベンジャーの子供たちや、マスクをしている大人たちを見ながら、不意にかぶる映像に時折足を止めてじっとそこを見つめて。
(…私は記憶を取り戻したい?)
そう自問した。答えはYESだ。だが怖いという気持ちもある。
(そもそもなんで、私は記憶がないのだろう)
マースに拾われてからの記憶しかないAにとって、それは最大の謎だ。その謎が、こわい。
(私が彼らを裏切って…というわけじゃないと思うんだけど…)
それならばそれなりの制裁があるはず。だがそれはなく、むしろ歓迎されている。だからその可能性は除外するとしても、あんな強い人たちに囲まれていて記憶を失うような何かが起こった、というのが想像つかないのだ。
ふと、路地を見る。
『運が良ければまたね!』
そんな声が、脳裏を駆け巡った。なんとなくそれが、過去の自分が放った言葉なのだろうと思う。
(ずいぶん明るい子だった…のかな)
場違いにもそんなことを考えた。言っては何だがこんなところで育った割に、屈託のない声音のように思えたのだ。それと同時に、これほど鮮明に過去の声を聴くという体験に、不思議な感覚を感じる。
「…誰と、またねって言ったんだろう」
首をかしげるが、映像までは思い浮かべられない。ただ、またね!と言えることがとても幸せだという感情だけが、胸を満たしていく。
(またね、と言えることは)
(明日への希望があるということ)
(この流星街でそんな希望をもってそう言えた自分は)
(よほど恵まれていたか、バカだったか)
(それとも、今の私なんて想像もつかないくらい、強かったかだ)
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累 - とても面白いです!つづき楽しみにまってます!頑張ってください、応援してます! (2020年4月6日 12時) (レス) id: 7d54cdb775 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 由宇さん» コメントありがとうございます!ちょいちょい停止しますが必ず書き上げますので、どうぞよろしくお願いいたします! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ここっちさん» もうちょいで記憶が!まだわかりません!(←)でも長い目で見ていただければと思います、よろしくお願いします! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ゆっずーさん» 遅くなりまして申し訳ありません!いつもありがとうございます!これからも頑張りますね! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
由宇 - 面白いです!早く更新停止が終わることを願ってます!頑張ってください! (2018年8月15日 11時) (レス) id: 06761224f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灯霧 | 作成日時:2017年7月10日 18時