story85 ページ37
翌日、Aは流星街を歩いて回っていた。朝になって目を覚ました時、隣にいたはずの男はいなかった。それに少しがっかりとしつつ、朝食をすませて記憶を取り戻すためにあたりを歩くことになったのだ。何かあったら連絡しろと持たされた新しい携帯を手に、文字通りゴミゴミしている通りを歩く。時折すれ違うのは、腐臭から守るためだろうか、ごついマスクをした人間たち。
(…こんなところに住んでいたなんて)
マースの所では自由すらなかったが、こぎれいな家を与えられていたAからすれば、流星街の街並みは常識からぶっ飛んでいる。一応前知識としてあたえられていた情報や昨日教会にたどり着くまでの街並みである程度覚悟はしていたが、一歩大通りから裏に入れば想像を超えた状況が目の前に広がっていた。じゃり、と音をさせゴミを踏みつぶしながら、胸に汚れた空気を取り入れ、その重さに改めて驚く。
(子供が生き抜けるような場所には思えない。…救いは、流星街は何をも受け入れる…つまり援助がまったくないというわけではないのだろうけれど…)
それでも大変なのは目に見えていた。一つのゴミ山に目を向ければ、スカベンジャーなのだろうか。子供たちが売れるゴミはないかと漁っている姿。軍手などもなく、着ている服もボロといっていいようなものだ。あれでは怪我をしないほうが難しい。衛生的にもよろしくないだろうに、彼らはそれが当たり前のように動いていた。大きなゴミを飛び越え、掘り起こし、何かを見つければやった!と騒いで。
(あんな子供が…)
胸が締め付けられるのはなぜだろう。かれらに同情しているのか、それとも自分の記憶が少しでも感化されているのか。汚れた顔で嬉しそうに笑う男の子が、戦利品をもってゴミ山を下りてくる。その彼と視線があって、つい反らしてしまった。なにもできない自分が、無力で。
(……あぁ、だからクロロは仲間を集めたのね)
一人では生き抜いていけないから。力を合わせるための仲間を集め、リーダーとして彼らをまとめあげ、弱いものを庇護して、強くなって。
(そして今でも、その仲間に背中を預けている。…私もきっと、その一人だった…)
だから彼らは、Aの記憶に執着するのだ。また、背中を預けて戦ってもらえるだろうか。
(記憶が戻らなくてもそうなってほしい)
(そんな風に、ついつい考えてしまう)
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累 - とても面白いです!つづき楽しみにまってます!頑張ってください、応援してます! (2020年4月6日 12時) (レス) id: 7d54cdb775 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 由宇さん» コメントありがとうございます!ちょいちょい停止しますが必ず書き上げますので、どうぞよろしくお願いいたします! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ここっちさん» もうちょいで記憶が!まだわかりません!(←)でも長い目で見ていただければと思います、よろしくお願いします! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ゆっずーさん» 遅くなりまして申し訳ありません!いつもありがとうございます!これからも頑張りますね! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
由宇 - 面白いです!早く更新停止が終わることを願ってます!頑張ってください! (2018年8月15日 11時) (レス) id: 06761224f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灯霧 | 作成日時:2017年7月10日 18時