story72 ページ24
Aが幻影旅団に連れてこられて、約一か月。その時が来た。
「そろそろ、結論を聞かせてもらおう」
団長として向かいに座るクロロを見ながら、Aは全員集合している団員たちを見た。何も言わず、ただ行く末を見届ける彼らを。その中でも小柄な、黒づくめの姿をしている彼を。
あの時から、フェイタンは暇さえあればAのそばにいる。今もさりげなく、一番近い位置を確保していた。ほかの団員に隠そうともせず独占欲を丸出しにしては、フィンクスにからかわれて彼をぶちのめすという光景、それはもはや日常と化している。
『昔よりひどいね、フェイタンの独占欲』
クスクスと笑ったシャルナークに結構本気の手刀が撃ち込まれたり。
『あまり束縛すると嫌われるぞ』
わざわざ忠告をしてくれたフランクリンに対して、フンと鼻を鳴らしてそっぽを向いたり。
『あまりAを独り占めすんなよ、俺たちだってあいつと話してぇ…っうわっ!』
文句をたれたノブナガに刀を向けてそのまま斬り合いになったり。
呆れることのほうが多い出来事だったが、その日常のおかげでAはあの出来事を忘れて彼らと接することができた。もしかしてそれが一番の目的だったのでは、と聞けば、偶然よ、と返されたが。
「…A?」
「クロロ。私は…記憶を失う前の私は、ここで笑っていた?」
取り戻しても苦しくない記憶なら。今のフェイタンからは想像もできないような小さなころのフェイタンの記憶なら。それに付随する幻影旅団としての自分の記憶なら。
「…悩んでいたこともあっただろう。少なくとも俺達には、それを悟らせまいと努力していた節はある」
「つまり、クロロはそうしていた私に気づいていたのね」
「まぁ、な。それくらいメンバーを見ていなければ、頭とは言えないさ。…だが、そうだな。あくまで俺の主観で言うなら、それでもAは楽しそうだった」
「…そう」
それだけわかれば、十分だった。息を吸い込み、吐く。
「私は、記憶を取り戻したい」
何もかも無気力で、どうなったってかまわないと思っていた。少なくとも、ここに連れてこられるまでは。だが彼らはAの気持ちなど知ったこっちゃないと言わんばかりに彼女を振り回して揺さぶって、こうして何かを欲する心まで取り戻させた。
(私がどういう気持ちでここにいたのか)
(どうしてみんなと仲間になったのか)
(以前の私はどんな人間だったのか)
(私はそれを知りたい)
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累 - とても面白いです!つづき楽しみにまってます!頑張ってください、応援してます! (2020年4月6日 12時) (レス) id: 7d54cdb775 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 由宇さん» コメントありがとうございます!ちょいちょい停止しますが必ず書き上げますので、どうぞよろしくお願いいたします! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ここっちさん» もうちょいで記憶が!まだわかりません!(←)でも長い目で見ていただければと思います、よろしくお願いします! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - ゆっずーさん» 遅くなりまして申し訳ありません!いつもありがとうございます!これからも頑張りますね! (2018年8月26日 14時) (レス) id: 94f5b58c39 (このIDを非表示/違反報告)
由宇 - 面白いです!早く更新停止が終わることを願ってます!頑張ってください! (2018年8月15日 11時) (レス) id: 06761224f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灯霧 | 作成日時:2017年7月10日 18時