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ポルチーニ茸の芳香が鼻腔を擽る。目の前に座ってパスタを食べる少女の所作は丁寧で、数刻前に男の前歯をへし折った人物とはとても思えなかった。
「ね、アンタあの武術は何処で習ったの?」
「師匠がやってるの見て真似た…とか?武術って程大したものでも無いんですけど」
「師匠ね…」
マチは少女の師匠を凄い人物だとも思ったし、それと同時に碌でもない奴だとも思った。
目の前の少女は10歳そこら。そんな子が念能力者と対等以上にやり合える。…それはつまり、文字通り血反吐を吐いてやりたい事をやれない、修行ばかりの日々を過ごしてきたという事だ。
「辛くは無かったの?」
「弱音吐いてる暇があったら修行してたんで…。私の性分的にはあの人が師匠で大正解なんだと思います」
実際そうらしいから尚タチが悪い。
マチは「そう」とだけ言ってほうれん草のサラダをつついた。
「ね」
「はい」
「なんでその師匠に着いていこうと思ったの?」
「あー…はは」
少女は笑って見せる
「わかんないんですよね、覚えてないから」
「覚えてない?…アンタ記憶が」
「朧気ですね。なんで気付いたら一緒に居たんです。」
「…結構な人生送ってきてんだね、アンタ。」
そこいらの大人よりよっぽど濃い人生を送ってきている。マチは思わず息をついて、少し居づらそうにする少女を見た。
子どもの割には世渡り上手でしっかりしており、初対面の相手に敬語を使える。腕っ節は強くそれなりに正義感もあり、オマケに顔立ちも整っている。…かと思えば、同年代と些細な事で喧嘩して拗ねる事もある。
見れば見る程、知れば知る程、少女からは何とも言えない不思議な魅力を感じた。
「ね」
「はい」
「もうちょっとアタシに付き合ってくれない?」
「?はい。」
言葉の目的もよく分からず少女は傾げながら返事をした。マチが不安になる程、少女は無防備であった。
*
「あいつ!!どこ行ったんだよ!」
「どうしよう、A方向音痴だからなぁ。」
「ちげーだろ、ぜってーへそ曲げてどっか行ったんだ!」
(へそ曲げて何処かに行ったら、戻って来れなくなったとかかな)
そういう子だから。とゴンは一人納得した。
「とりあえず探さ」
『2055番、1973番、Eのリングへどうぞ』
「あちゃ、呼ばれちゃった。」
「ゴン、行ってこいよ。さっき言ったこと忘れんなよ。」
「うん。思いっきり押すってヤツね。キルアは探しに行くの?」
「…行かねーよ!」
(あはは、素直じゃないなあ)
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かぴばら2(プロフ) - mzさん» ワー!!!コメントありがとうございます!シリアスな時はとことん暗く、その分ほのぼの回ではゆるっゆるに書かせて貰ってます!!!長い事書いてるのにまだゴン達の夏休みは来てません…!!更新がんばります! (2021年7月22日 21時) (レス) id: a02d4950c9 (このIDを非表示/違反報告)
mz(プロフ) - 1作目から途中までですが、一気に見させていただきました!シリアスな場面の緊張感や主人公達のほのぼのとしたやりとりのギャップが凄すぎて、圧巻でした…。ゆっくりと、むふふとしながら楽しませて頂きます…!! (2021年7月22日 2時) (レス) id: 77bee458f3 (このIDを非表示/違反報告)
かぴばら2(プロフ) - 有希さん» この作品に触発されて…!!?ヤバいっすね…ニヤニヤするぐらい嬉しいです。ぶっちゃけハンタ作品は鬼を滅する!!とか呪いと戦う!!とかより全然供給少ないので、こうして触発されて書いてくれる方が居るのがすごく嬉しいです!コメントありがとうございます! (2021年2月20日 14時) (レス) id: a02d4950c9 (このIDを非表示/違反報告)
かぴばら2(プロフ) - 有希さん» 戦闘描写ってめっっっっちゃ難しいですよね!!?夢主ちゃんには超近距離でボコボコにしてボコボコにされて欲しいです…(歪んだ愛)鼻血が似合う主人公を目指してます。師弟対決私も早く見たいです() (2021年2月20日 13時) (レス) id: a02d4950c9 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 連続コメ失礼します!戦闘描写が大好きです。戦闘シーンまで読み込んだ作品は初めて。夢主ちゃんの超近距離な戦い方が性癖に刺さって抜けません。超絶私事ですが、かぴばらさんの作品に触発されてハンタ作品を書き始めました。師弟対決をお待ちしてます(コソッ (2021年2月19日 18時) (レス) id: e15740c466 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かぴばら | 作成日時:2020年12月6日 10時