私は師匠を信じない【HUNTER × HUNTER】

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「…わかりませんって言った割に、ちゃんと答えてくれますね。」
「私は私の見解を述べたまでです。…思い当たる節は？」
「…わかんないけど、多分ウイングさんの言った後者の通りだと思う。それが一番『念』らしい。」

「…だとしたら、改めて自分の能力を理解しないと。」

顎に手をやり、難しい顔をする。ウイングは穏やかな表情でそれを眺めた。

「無意識で使えていたと言うのなら、理解せずに居ても良いのではありませんか？」
「意地悪言わないでください。それじゃ成長できないのと一緒だ。」

(…私は、心無き小悪魔(ハートレス)を理解していなかった。)
(『なんとなく』『やったらできた』)
(…ふざけるな。)

(そんなのだからクロロに盗られた…！！)

ギッと歯を食いしばり、爪を立て拳を握る。

「…ありがとうございます。参考になりました。」

深深と頭を下げる少女。ウイングは変わらぬ穏やかな表情で告げた

「いいえこちらこそ。貴方を見ていると私も勉強になります。」
「…そりゃどうも。我ながらイレギュラーな存在だとは自負してるんで、いい教材にはなるかと。」
「確かに。貴方は特殊すぎますね。探ればまだ色々出てきそうだ。」
「…はは、おてやわらかに。」

探れば、か。

(私の知らない私の事が、まだある。)

今は二の次だけど、それもいつか知りたい。

(嗚呼…)

(楽しいな…！！)

知る事は、得る事は、楽しい。

＊

あれから一ヶ月。少女はその間休むことなく念の修行に明け暮れていた。

「…Aちゃんと寝てる？」
「…めちゃくちゃ寝てるし。半日くらい寝てるし。」
「一時間も寝てない顔して何言ってんだよ。」

少女の部屋を訪ねてきたゴンとキルアは、部屋から出てきたやつれた顔を見て頬をひくつかせる。

「…で、何かあったの？」
「今日、ヒソカ対カストロ戦だろ。チケット取ってあるからい」
「し、師匠とカストロ！？聞いてないそんなの！！」
「…マジで修行以外の事シャットアウトしてたんだな。」

間抜けに呆けた顔で「師匠対カストロ…」と口の中で咀嚼する。

「ゴンはまだメガネ兄さんの許可降りてねえから行けないけど、お前は」
「いく！」
「く、食い付きがスゴいね。」
「なら決まりだ。試合開始は二時間後、それまでに飯食ってようぜ。」
「それは良いけど…ゴン、もう動いて大丈夫なの？」
「ばっちし！もう全快だよ！」
「…この治癒力オバケめ」

恨めしい顔をする少女に、キルアは『お前が言うな』と呆れた目を向けた。

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