掠れ爛れ捻れた記憶 ページ33
幼い頃、師匠のなんて事ない打撃で昏睡状態に陥った事がある。ソレが、初めて受けた念での攻撃だった。
*
ヒソカに殴られ意識を失って一晩経ち、少女はハッと目を覚ました。窓の外の木々から零れる日差しは何処か心許なく、起きてすぐの少女の心を陰鬱にさせる。
ここは山奥にある小さな小屋。すきま風が入り込み埃っぽく古びたその小屋を、ヒソカと少女は一時期
少女が身体を起こすと頭がぐわんと揺れた。きもちわるい、吐きそうだ。水が欲しい。少女はベッドを降り、老朽化して扉が外れた入り口に向かう。その瞬間、背後に何かの気配。
少女はサッと振り返ったが誰も何も居ない。
(…?)
この目には何も映らない。が、確実に『何か』が居る。人ではない。幽霊か?
窓の外で風が吹いて木々がざわめいた。舞い散る葉が窓に当たってコツ、と音を立てる。
「だれかいるの。」
小さなハッキリとした声で聞く。しかし返事はない。風は尚強く吹き続けている。ザアザアと雨のようにうるさい。
その時少女は視界に違和感を感じた。なんだ、何かが、
(…部屋が狭くなった?)
片眉を釣り上げ小首を傾げる。…いいや違う。部屋が狭くなったんじゃない。
(私の影が大きくなったんだ!!)
その事実に気づいた途端、影の中から目のような物がギョロリとこちらを向いた。少女は声も出ないほど驚いて、尻もちをつく。
「な、…んだこれ」
逃げる?逃げられるのか?ならば消す?どうやって?
「…無様だね」
「師匠、」
突然現れたヒソカに少女はまたしても驚く。
ヒソカは地べたに座り込む少女の頬に手をやると、『影』にその顔を向かせる。
「戻れと念じながら影が収縮するのをイメージするんだ。」
「但し、影の中に戻すんじゃない。キミの身体の中に仕舞いこむ様に、あるいは纏うように」
「どちらでもいい。やってみな♤」
珍しいアドバイスに少女は目を丸くした後、『無様』だと罵られた事に少し腹を立てた。
だけど、今は引っ込める事の方が優先だ。
少女は目を閉じて念じ、イメージする。自身を器にして影を注ぎ込む様に。溢れないよう、留まらせる。すると影はみるみるうちに少女に吸い込まれる様にして収縮していった。
「…上出来だ、その感覚を常に意識するんだよ♧」
にこにこと笑ってヒソカは少女の瞼にキスを落とす。
少女は鬱陶しそうに眉間に皺を寄せた。
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かぴばら2(プロフ) - mzさん» ワー!!!コメントありがとうございます!シリアスな時はとことん暗く、その分ほのぼの回ではゆるっゆるに書かせて貰ってます!!!長い事書いてるのにまだゴン達の夏休みは来てません…!!更新がんばります! (2021年7月22日 21時) (レス) id: a02d4950c9 (このIDを非表示/違反報告)
mz(プロフ) - 1作目から途中までですが、一気に見させていただきました!シリアスな場面の緊張感や主人公達のほのぼのとしたやりとりのギャップが凄すぎて、圧巻でした…。ゆっくりと、むふふとしながら楽しませて頂きます…!! (2021年7月22日 2時) (レス) id: 77bee458f3 (このIDを非表示/違反報告)
かぴばら2(プロフ) - 有希さん» この作品に触発されて…!!?ヤバいっすね…ニヤニヤするぐらい嬉しいです。ぶっちゃけハンタ作品は鬼を滅する!!とか呪いと戦う!!とかより全然供給少ないので、こうして触発されて書いてくれる方が居るのがすごく嬉しいです!コメントありがとうございます! (2021年2月20日 14時) (レス) id: a02d4950c9 (このIDを非表示/違反報告)
かぴばら2(プロフ) - 有希さん» 戦闘描写ってめっっっっちゃ難しいですよね!!?夢主ちゃんには超近距離でボコボコにしてボコボコにされて欲しいです…(歪んだ愛)鼻血が似合う主人公を目指してます。師弟対決私も早く見たいです() (2021年2月20日 13時) (レス) id: a02d4950c9 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 連続コメ失礼します!戦闘描写が大好きです。戦闘シーンまで読み込んだ作品は初めて。夢主ちゃんの超近距離な戦い方が性癖に刺さって抜けません。超絶私事ですが、かぴばらさんの作品に触発されてハンタ作品を書き始めました。師弟対決をお待ちしてます(コソッ (2021年2月19日 18時) (レス) id: e15740c466 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かぴばら | 作成日時:2020年12月6日 10時