高みの見物してろ ページ29
「おつかれ」
「疲れてないよ?」
「こういうのはカタチだろうが」
キルアから投げられるジュースを少女は片手でパシリと取る。
「…これ炭酸入ってないよね?」
「ただのオレンジジュースだから安心していいよ」
「ん、良かった」
「俺が言ってたら信用しなかっただろ」
「そこは日頃の行いってヤツかな。」
少し談笑してから少女は少し離れた所にいるウイングに目を向け、にっと笑う。
「どうでした?私の試合。」
屈託のない笑顔の少女に対して、ウイングの表情は何処か堅い。
「…色々とあなたの戦い方に思うところがある、というのが正直な感想です。」
ウイングが少女の指を見ると、少女は焦った様にその指をサッと隠した。少女にしては随分小さな傷。それでも常人は軽く騒ぎ立てる程の深い傷だ。
目を逸らした少女からは『後ろめたい』の感情がありありと見える。悪い事をしているのは自覚しているが、直す気は無いのだという少女の意志が垣間見えた。
ウイングは困ったように笑う。
「しかし、それは私が口を出す事ではありませんね。」
「素晴らしい。あなたの才とこれまでの弛まぬ努力の結晶の片鱗を、先程の試合で見せられました。」
ス、と差し出される右手に少女はポカンとする。てっきり怒られるのかと思っていた。
「良い試合を、ありがとうございました。」
ウイングの言葉に少女の表情はパッと明るくなる。
「はい、これからも精進します!」
少女は快くその右手を握り返した。
*
ウイング達と別れ、キルアの部屋に集まる三人。ゴンとキルアの希望により、本日の少女の試合をもう一度観ることとなった。ちなみに少女は小っ恥ずかしくて一度も画面を見ようとしない。
「…やっぱりAは凄いね」
「そうでしょ?」
「否定しろよ。鼻高になるのやめろ」
「ホントの事だもん。」
冷めた目で少女を見ようとしたキルアは、少女の様子に動きが止まる。声色の割には真剣な目をしていたからだ。
「…でも、私に無いものを二人は持ってる。」
「…世辞か?」
「本心。」
ジュースの最後の一口を飲んでから、少女は続けて言った。
「ゴンなら優れた視力と聴力と嗅覚。キルアなら毒耐性と電気耐性。肺活量なら二人より私の方が劣ってるかもね。」
「今はまだ、それは些細な事かもしれない。私の方が戦闘経験豊富だし、念能力者としても成熟してるから、当然私の方が強い。」
「でもそんなの、気を抜いてたらすぐに追い抜かれちゃう。」
「うかうかしてらんないよ。」
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かぴばら2(プロフ) - mzさん» ワー!!!コメントありがとうございます!シリアスな時はとことん暗く、その分ほのぼの回ではゆるっゆるに書かせて貰ってます!!!長い事書いてるのにまだゴン達の夏休みは来てません…!!更新がんばります! (2021年7月22日 21時) (レス) id: a02d4950c9 (このIDを非表示/違反報告)
mz(プロフ) - 1作目から途中までですが、一気に見させていただきました!シリアスな場面の緊張感や主人公達のほのぼのとしたやりとりのギャップが凄すぎて、圧巻でした…。ゆっくりと、むふふとしながら楽しませて頂きます…!! (2021年7月22日 2時) (レス) id: 77bee458f3 (このIDを非表示/違反報告)
かぴばら2(プロフ) - 有希さん» この作品に触発されて…!!?ヤバいっすね…ニヤニヤするぐらい嬉しいです。ぶっちゃけハンタ作品は鬼を滅する!!とか呪いと戦う!!とかより全然供給少ないので、こうして触発されて書いてくれる方が居るのがすごく嬉しいです!コメントありがとうございます! (2021年2月20日 14時) (レス) id: a02d4950c9 (このIDを非表示/違反報告)
かぴばら2(プロフ) - 有希さん» 戦闘描写ってめっっっっちゃ難しいですよね!!?夢主ちゃんには超近距離でボコボコにしてボコボコにされて欲しいです…(歪んだ愛)鼻血が似合う主人公を目指してます。師弟対決私も早く見たいです() (2021年2月20日 13時) (レス) id: a02d4950c9 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 連続コメ失礼します!戦闘描写が大好きです。戦闘シーンまで読み込んだ作品は初めて。夢主ちゃんの超近距離な戦い方が性癖に刺さって抜けません。超絶私事ですが、かぴばらさんの作品に触発されてハンタ作品を書き始めました。師弟対決をお待ちしてます(コソッ (2021年2月19日 18時) (レス) id: e15740c466 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かぴばら | 作成日時:2020年12月6日 10時