ハッピーエンド３５ ページ35
帰り道。
私は、近藤さんから聞いた話を思い出していた。
親代わりだったミツバさんと二人っきりで生きてきた。
唯一の身内が死に、居場所が真選組しかなくなった総悟くん。
若いのに一番隊長という責任を負い、人を斬り、任務を遂行する。
仲間が殺されることだってある。
その責任を押し付けられる時もある。
安心できる毎日では、ない。
「どうしやした？俯いて」
そんな総悟くんの声でハッとなる。
一緒に隣を歩く総悟くんを見ると、長いまつ毛を揺らしこちらを見つめていた。
心配そうな眼差しに、胸がチクリと痛む。
「…総悟くん、どこか遠い場所行きませんか」
「…は？」
ボソッとそう呟くと、彼は目を見開いた。
「急にどうしたんです？近藤さんに何か吹き込まれたんですかィ」
「いえ、そういう訳じゃないんです…だた、総悟くんと思い出作りたくて」
すると、彼は少し黙り込む。
沈黙の間、ずっと総悟くんの目を見ていた。
「じゃあド田舎行きやしょう。あ、ピクニックなんで弁当作ってきてくだせェ」
「えぇ！？お弁当ですか！？」
「前の男と同居してた時、作ってたりしなかったんですかィ」
急にムスッとする総悟くん。
春樹さんの話し出さないでくださいよぉ…。
半泣きになりながら承知すれば、すぐに機嫌を治してくれて。
「Aさんの手作り弁当楽しみだなぁ〜」
「そんなに期待しないでくださいね」
平和な時間を、あなたと過ごしたい。
素敵な時間を、あなたの記憶に増やしたい。
そんなことを頭の片隅で考えていた。
少しでも日々の疲れを忘れられるように。
そう願いを込め、私は彼と日程を立てながら家に帰ったのだった。
次の日の朝。
いつも通り甘味所へ出勤し田中さんに挨拶すると、今日はやけに彼女の機嫌がよくて。
「何か嬉しいことありました？」
そう聞けば、頬を赤く染め幸せそうに笑った。
「孫の結婚式が決まったんですよ。北海道で式を挙げるそうなの、だから少しの間この店を休業することにするわね」
「え！？そうなんですか！？」
お孫さんがご結婚なさった話は知っていた。
けど、結婚式の話は初耳だ。
そして休業することも。
「あの、いつ頃ですかね…」
「明日から一週間かしら」
「あ、明日から！？！？」
これは、神様からのご褒美なのでしょうか。
総悟くんと出かけてきていいと、そう言ってくださっているのでしょうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 125人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
お茶(プロフ) - アクヤさん» 素敵なコメントありがとうございます！頑張ります泣 (2019年11月9日 20時) (
レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
アクヤ(プロフ) - とても面白いです！これからも頑張ってください！応援してます！ (2019年11月9日 17時) (レス) id: 64d635022a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：お茶
| 作成日時：2019年9月1日 1時
