恐竜くんとヌナ

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ジョンハンside

目の前にいるAはかなりお酒が回ってきたようで、隙だらけの笑顔を見せてくる。

こんなのディノやスングァニが見たら頭抱えるんだろうな。

ソン・Aは、2年前からほっとけない奴だった。しっかりしているように見えてプライベートは抜けてるし、冷たいヤツに勘違いされることも多いけれど情に厚い。

「少し水飲みな」

そう言うと、こくりと頷いて水を口にするA。

ディノがコイツに過保護になる気持ちも正直言ってわかる。

ほかっておいたらとんでもない詐欺にあいそうだし、道端のご老人を助けるために自分が死にかねない。

どうしたらこんな優しい奴が育つんだ、と思ったのは人生で2回目だった。

1度目はもちろん、俺らのドギョム。あいつもお人好しで優しすぎるぐらい優しくて、度量がすごい。

そして、2人とも自分に厳しい。厳しすぎる。

見ていてもどかしくなる。そうじゃなくてそこを選べばお前らはもっと簡単に幸せになれるのに！と俺含め周りは見ていてモヤモヤする。

そう、俺は今めちゃくちゃにモヤモヤしている。


こいつが大好きだった彼氏に振られたのは丁度半年前ぐらい。

Aの1つ下の彼氏がある日、こいつを呼び出して言ったらしい。

『俺、Aといても寂しいから別れて』



スングァニと俺はその話を聞いて殴り込みに行きそうになったが、それは優しすぎる馬鹿なこいつによって止められた。

あの事件以来、彼女には、私と付き合っても寂しがらせてしまうだけ、という根強いトラウマが残ってしまったようだ。

まったく、あんなクソ野郎の言葉を真に受ける必要なんてどこにもないのに。

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