Call My Name ！ Ⅱ (ページ10)

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　＊

「黄瀬、あとは自分でやるから戻っていいぞ…………」

　保健室にて、椅子に降ろされた朱は開口一番そういった。然し黄瀬はカチャカチャと勝手に弄りながら言う。

「ダメっすよ。先生もいないしそれ手当しなきゃ」

「だけど………「怪我人は大人しく手当されてなさい、ってね。はい、足失礼っす」う"………」

　黄瀬はそう言うとテキパキと私の手当をし始めた。消毒液が傷口に染みる。そしてなんだかムズ痒い。

　こんな風に誰かに手当されることはそうそうないからだろう。穴があったら入りたい、そう思った。そんな私をよそに黄瀬は明るい口調で言う。

「…………よし、できたっす！」

「…………ありがとう」

「どういたしまして。他に痛いところとか………＿＿＿あれ、センパイ目の下………」

「………！」

　そっ、と黄瀬が私の頬に触れてきた。距離が近い。いや、いつも近いけどそんなの比じゃないくらい近い。けど黄瀬はそんなのお構い無しに言う。

「やっぱり、クマ出来てる。今日は授業中寝なかったんすか？」

「…近い。離れろ」

「答えてくださいっす」

「…………………寝た」

「それなのにこのクマ…………センパイ昨日寝てないっしょ」

「…………………」

　なんでわかるんだ。怖いぞコイツ。黙る私に黄瀬は大きく溜息づいた。

「どうせまたボクシングのことでしょ？程々にしてくださいっす」

「…………煩い、私の勝手だろ」

「そうは行かないっす。だって＿＿＿＿」

　黄瀬はそこで言葉を切って、私の頬を撫でた。擽ったい。けどそんなの気にしてられない。黄瀬が＿＿＿真剣な顔で私を見つめてる。熱の篭った瞳で、言葉を紡いだ。

「俺は＿＿＿センパイが自分を大事にしないの、許せないっす。

　センパイは俺にとって大事な人だから」

「……………え」

　さぁぁ、と窓から入ってくる風でカーテンが舞う。日差しがその隙間から入ってくる。

　薬品の匂い、カーテンと黄瀬の髪を揺らす風、騒がしい外とはかけ離れた静かな空間、＿＿＿真剣な表情の黄瀬。

　私の中の時間が、一瞬止まった。